今回と次回の2回は、浅大腿動脈から膝窩動脈領域での治療のポイントを説明します。
I. 非閉塞例の場合
閉塞していなければ対側の大腿動脈を穿刺し、クロスオーバー法で治療しています。狭窄のみの場合には、強力なバックアップを必要とする可能性も少なく、同側穿刺は必要ありません。
本講座の総論でも紹介しましたが(第3回 PDA治療の適応2「大腿動脈領域では、ステントの破損しやすさが課題」参照)、FAST研究では、狭窄が短い場合はバルンでもステントでも成績に差はありませんでした。この知見に基づき、私たちもできるだけバルンの拡張だけで終了するようにしています。
その際、拡張時間が長い方がリコイルや解離の発生が少ないことが報告されているので、最低3分間は拡張するようにしています。ステントを使用するのは、血流を阻害するような解離が生じた場合や、どうしても50%以上の残存狭窄がある場合に限っています。
II. 閉塞例の場合
本講座の第5回 大動脈―腸骨動脈領域の治療2「慢性完全閉塞(CTO)にはどう対応すればよいか」で紹介したOutbackやPioneerといったpenetrationデバイスは、本邦では使うことができません。
これらのデバイスが使えるのなら、順行性で一方向性に手技を進めてもsubintimal spaceからtrue lumenに戻ることができるので、成功率は高くなります。しかし、本邦のようにワイヤーだけでtrue lumenに戻すのは、難しいことが多いといえます。
一方向性アプローチ
一方向性のアプローチには、エコーなどを用いてなるべくtrue lumenを探して進んでいく方法と、最初からsubintimal spaceを利用して進めて行く方法があります。true lumenを狙うに越したことはありませんが、長いCTOの場合には非常に時間がかかるので、基本的にはsubintimal法を採用しています。
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著者プロフィール
井上直人(仙台厚生病院循環器内科主任部長)いのうえなおと氏。1982年京都府立医大卒。84年松下病院循環器内科、86年京都府立医科大学 第二内科修練医、88年京都第一赤十字病院循環器科。96年京都第二赤十字病院 循環器科、2002年同部長。2007年より現職。

連載の紹介
井上直人の「実践・下肢インターベンション」
5年ほど前から急速に日本で広まってきた下肢領域のインターベンション。筆者の井上直人氏はこの分野で先駆的な医師の1人だ。主任部長を務める仙台厚生病院循環器内科では、年間200例ほどを手がける。学会、講演会などで講演することも多い井上直人氏が豊富な症例を示しながら、教科書には載っていないポイントを分かりやすく解説。
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