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第1回 スクリーニング&診断
診断のスタンダードは血管造影。しかし、落とし穴も...

2009/04/28

Ⅰ. はじめに

 生活習慣の欧米化に伴い、PAD疾患(Peripheral Artery Disease)が増加しています。PADは、四肢の動脈に動脈硬化を来す疾患で、慢性的な狭窄や閉塞により血流障害を引き起こします。それにより、下肢の冷感やしびれ、間欠性跛行、安静時疼痛、足趾潰瘍や壊死を生じます。

 本稿ではこのPADについて、スクリーニングから治療までを、私の経験を基に解説してきます。実際の症例に基づいたノウハウを中心に、一般の教科書では触れられていない点に、重点を置きたいと思います。PADの診断、治療をしている先生方、これから手がける先生方のお役に立てば幸いです。

 最初の2回で、患者のスクリーニングと診断について説明する予定です。その後は症例を提示しながら、実例に基づいて治療のポイントを述べていきたいと考えています。

脳血管障害、冠動脈疾患に高率に合併
 脳血管疾患や虚血性心疾患は、日本人の代表的な死亡原因であり、これらについてはスクリーニングや治療が確立しています。しかしPADに関しては、そもそもあまり注目されていませんでした。しばしば整形外科的な疾患などと間違われて、見過ごされてきたのが実情です。

 日本人の有病率についての正確な統計はないのですが、奄美大島の一般住民健診 において、平均年齢70歳でABI(Ankle Brachial Index)<0.7をカットオフとした場合、0.3%にPDAが認められたとの報告があります。JR仙台病院の市来正隆先生らの報告では、仙台市 の健診において、平均年齢が74歳だった971例の2.0%にPADが認められたとのことです。

 動脈硬化は全身的なものであって、脳血管障害や冠動脈疾患の患者は高い率でPADを合併するといわれています。この傾向は、2007年に報告された国際共同研究「REACHレジストリー」1)から、欧米のみならず日本でも同じであることが明らかになっています。

著者プロフィール

井上直人(仙台厚生病院循環器内科主任部長)いのうえなおと氏。1982年京都府立医大卒。84年松下病院循環器内科、86年京都府立医科大学 第二内科修練医、88年京都第一赤十字病院循環器科。96年京都第二赤十字病院 循環器科、2002年同部長。2007年より現職。

連載の紹介

井上直人の「実践・下肢インターベンション」
5年ほど前から急速に日本で広まってきた下肢領域のインターベンション。筆者の井上直人氏はこの分野で先駆的な医師の1人だ。主任部長を務める仙台厚生病院循環器内科では、年間200例ほどを手がける。学会、講演会などで講演することも多い井上直人氏が豊富な症例を示しながら、教科書には載っていないポイントを分かりやすく解説。

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