日経メディカルのロゴ画像

J Am Coll Cardiol誌から
ICD植え込み術周術期合併症を減少させるためのリスクモデル
アウトカム改善を目指した病院の努力を支援する新たな試み

2014/01/07
山川 里香=医学記者

 除細動器(ICD)植え込み術の周術期合併症を減らすため、新たな簡易リスク評価モデルが作成された。このモデルは、医師と患者がともに意思決定したり、患者のアウトカムを改善するための病院の努力を促したりするのに有用だという。この結果は、J Am Coll Cardiol誌2013年11月27日号オンライン版に掲載された。

 ここ10年間でICD植え込み率は上昇している。しかし、周術期合併症というリスクが伴うため、入院期間の延長、費用の増大、6カ月生存率の低下といった問題が生じている。

 これまでのリスク評価モデルの問題点は、参加病院ごとの患者特性や手技特性で調整していないため、病院の成績ではなくケースミックスの差を反映している点だった。この問題に対処するため、Brigham & Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの研究者らは、ICDレジストリーデータを用いて、病院ごとのリスク標準化合併症発生率を算出するためのリスクモデルを作成した。病院はこのリスクモデル用いて自らの施設の成績が平均よりも上なのか下なのかを判定して、質を改善するための努力目標を設定できるという。

 ICDレジストリーには現在、米国で施行されたICD植え込み術の90%超に関するデータが収集されている。今回の対象者集団には、2010年4月~2011年12月の期間にICDの新規/再植え込み術を受けた患者全員を採用した。ただし、心外膜リード留置術、リードのみの処置、リード抜去を含む処置を受けた患者は除外した。

 主要評価項目は手技関連合併症(心停止、心穿孔、冠静脈解離、血胸のいずれかを含む)、デバイス関連感染症、リードの移動、心筋梗塞、心タンポナーデ、気胸、脳卒中/一過性脳虚血発作、緊急心臓手術、血腫または位置決めねじのトラブル、死亡の複合とした。

 サンプルを誘導コホート(70%)と検証コホート(30%)に分類し、C統計量で各コホートにおいてモデルの識別力を評価した。多変量ロジスティック回帰を用いて院内有害事象(合併症または死亡)と関連性のある要因を特定し、ロジスティックモデルで得たベータ推定値に基づいて簡易リスクモデルを作成した。次いで、階層モデルを用いてリスク標準化合併症発生率を算出した。この簡易リスクスコアは、ベッドサイドで患者のリスクを計算できる。

 研究期間中に実施された処置は26万3284例だった。リードのみの留置術(9855例、3.7%)、心外膜リード留置術(5677例、2.2%)およびリード抜去術(7120例、2.9%)を除外し、最終的に24万632例を解析サンプルとした。

 解析サンプルの59.5%が初回ICD植え込み術、76.6%が一次予防だった。対象者は平均67.3歳、27.3%が女性。最も多かった内科的疾患は高血圧(78.3%)で、心筋梗塞の既往(50.7%)、心不全(42.4%)、糖尿病(37.9%)および慢性肺疾患(21.6%)などが続いた。最も多かったデバイスは両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D。42.5%)、次いで二腔デバイス(38.3%)、単腔デバイス(19.0%)だった。

 計4388例(1.8%)に院内合併症1種以上または死亡が発生した。有害事象が多かった対象者の方が高齢(68.4歳 vs. 67.3歳、P<0.0001)で、女性の割合が高かった(33.2% vs. 27.2%、P<0.0001)。また、主な理由がICD植え込み術以外(47.3% vs. 26.4%、P<0.0001)も多く、過去6カ月以内に心不全により入院していた割合も高かった(25.4% vs. 15.6%、P<0.0001)。

 因子のうち13個が独立して有害転帰リスクの増大と関連していた。誘導コホートと検証コホートのモデル性能は同程度だった(C統計量はそれぞれ0.724、0.719)。

 有害事象と最も関連性が強かったのは手技のタイプだった。初回ICD植え込み術の合併症発生率は、バッテリー寿命が尽きたという理由の発生器交換術の3倍超だった(オッズ比[OR]:3.57、95%信頼区間[CI]:3.13-4.08)。また、CRT-Dまたは二腔デバイスの合併症発生率の方が、単腔デバイスより高かった(CRT-D対単腔のOR:1.73、95%CI:1.51-1.98、二腔対単腔のOR:1.45、95%CI:1.28-1.64)。

 また、心不全の重症度が高いほど合併症発生率も高かった(NYHA機能クラスIV vs. クラスI/IIのOR:2.01、95%CI:1.71-2.36)。

 なお、リスク標準化合併症発生率は、病院によって有意に異なっていることも明らかになった(中央値:1.77、四分位範囲[IQR]:1.54-2.14、5%/95%パーセンタイル:1.16/3.15)。

 これらの結果をもとに著者らは、簡易リスク評価モデルを作成した(表1)。独立して有害転帰リスクの増大と関連していた因子のうち12因子を抽出し、それぞれのベータ推定値に基づいてポイントを設定。患者ごとにリスクを評価し、対応するポイントを加算することで、有害転帰リスクの増大を把握するようにした。この簡易リスク評価モデルの結果を検証したところ、誘導コホートと検証コホートにおいて患者分布に偏りは見られず、また、モデルのポイント合計が多いほど有害転帰リスクが増大することも確認された。

この記事を読んでいる人におすすめ