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JAMA誌から
米国・高血圧治療ガイドライン(JNC 8)が発表

2013/12/30
山田 裕紀子=メディカルライター

 JNC 8(Eighth Joint National Committee)による新たな高血圧治療ガイドラインがJAMA誌12月18日号オンライン版に発表された。

 JNC 8は、今回のガイドライン作成にあたって、ランダム化比較試験(RCT)から得られたエビデンスに限定してレビューを行った。したがって、レビューには観察研究、系統的レビュー、メタ解析の報告は含まれていない。またレビューでは、降圧薬による治療開始の閾値、降圧目標値、特定の降圧薬または薬剤のクラスという3点それぞれが重要な転帰を改善するかどうかという点に焦点が置かれた。今回提示された9つの推奨はこれらの疑問点を反映したものである。

 前回のJNC 7では、第1選択薬として5つのクラスの降圧薬が推奨され、特に理由のない場合は、ほとんどの患者でサイアザイド系利尿薬が第1選択薬として推奨されていた。しかし、今回のJNC 8のガイドラインでは、4つのクラス(アンジオテンシン変換酵素阻害薬[ACEI]、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、Ca拮抗剤[CCB]、利尿薬)が推奨された。

 JNC 8による9つの推奨は以下のとおりである。また、高血圧管理のアルゴリズムが図1にまとめられている。

推奨1
 60歳以上の一般患者では、収縮期血圧(SBP)が150mmHg以上または拡張期血圧(DBP)が90mmHg以上で降圧薬による治療を開始し、降圧目標はSBPが150mmHg未満、DBPは90mmHg未満とする。(強い推奨、グレードA)

Corollary Recommendation
 60歳以上の一般患者では、降圧薬による治療でより低いSBP(例えば140mmHg未満)が達成されており、治療によって健康またはQOLに対する有害作用が発生していない場合は、治療を修正する必要はない。(専門家の意見、グレードE)

推奨2
 60歳未満の一般患者では、DBPが90mmHg以上で治療を開始し、目標DBPは90mmHg未満とする。(30歳~59歳では強い推奨、グレードA。18歳~29歳では専門家の意見、グレードE)

推奨3
 60歳未満の一般患者では、SBPが140mmHg以上で治療を開始し、目標SBPは140mmHg未満とする。(専門家の意見、グレードE)

推奨4
 18歳以上の慢性腎臓病(CKD)患者では、SBPが140mmHg以上またはDBPが90mmHg以上で治療を開始し、降圧目標は140/90mmHg未満とする。(専門家の意見、グレードE)

推奨5
 18歳以上の糖尿病患者では、SBPが140mmHg以上またはDBPが90mmHg以上で治療を開始し、降圧目標は140/90mmHg未満とする。(専門家の意見、グレードE)

推奨6
 黒人以外の一般患者(糖尿病患者を含む)では、第1選択薬は、サイアザイド系利尿薬、CCB、ACEIまたはARBとする。(中等度の推奨、グレードB)

推奨7
 黒人の一般患者(糖尿病患者を含む)では、第1選択薬はサイアザイド系利尿薬またはCCBとする。(黒人の一般患者では中等度の推奨、グレードB。黒人の糖尿病患者では弱い推奨、グレードC)

推奨8
 18歳以上でCKDを合併している患者では、腎転帰を改善するために、第一選択薬または併用薬の1剤はACEIまたはARBとする。これは、人種または糖尿病の有無にかかわらず、高血圧を合併しているすべてのCKD患者に適用される。(中等度の推奨、グレードB)

推奨9
 降圧治療の主な目的は、目標血圧を達成し、維持することである。治療1カ月以内に目標血圧が達成されない場合は、第1選択薬を増量するか、第2選択薬として推奨6の薬剤クラス(サイアザイド系利尿薬、CCB、ACEI、ARB)から1剤を追加する。臨床医は、目標血圧が達成されるまで、血圧の評価を継続し、治療計画を調整すべきである。

 2剤でも目標血圧を達成できない場合は、第3選択薬を追加、増量する。ACEIとARBを併用してはならない。推奨6の薬剤を用いて目標血圧を達成できない場合、禁忌のため、または目標血圧を達成するために3剤以上の薬剤を用いる必要がある場合には、他のクラスの降圧薬を使用してもよい。上記の戦略を用いても目標血圧が達成できない患者、またはさらなる臨床的診察が必要とされる複雑な患者の管理では高血圧の専門医に相談する。(専門家の意見、グレードE)

 治療戦略として、A、B、Cの3つが提言されている。戦略Aでは、最初に選択した降圧薬で目標血圧が達成されない場合は、同剤を最大推奨用量まで増量し、それでも達成できない場合は第2選択薬(サイアザイド系利尿薬、CCB、ACEIまたはARB)を追加する。戦略Bでは、最初に選択した降圧薬の最大推奨用量まで投与する前に、第2選択薬を追加し、目標血圧に到達するまで両剤を最大推奨用量の範囲で増量する。戦略Cでは2種類の降圧薬の併用または合剤で治療を開始し、目標血圧が達成されない場合には第3選択薬(サイアザイド系利尿薬、CCB、ACEIまたはARB)を追加する。

 JNC 8は、本ガイドラインは高血圧を再定義するものではなく、JNC 7の140/90mmHgの定義が適切と考えていると述べている。血圧とリスクの関係は、血圧がさらに低値の場合でも直線的であることが認められているが、その低い値まで血圧を下げる治療のベネフィットは確立されていないと指摘している。また著者らは、これらの推奨は臨床判断の代わりとなるものではなく、治療法の決定は、患者それぞれの臨床的特徴と状況を踏まえ、慎重に検討する必要があると補足している。

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