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J Am Coll Cardiol誌から
心筋トロポニンT値上昇でPAD患者の総死亡率、下肢切断率は有意上昇
腎機能低下とは独立した関連性を示した初の大規模コホート研究

2013/07/16
山川 里香=医学記者

 末梢動脈疾患PAD)患者では小幅であっても心筋トロポニンTcTnT)値が上昇していると、腎機能低下とは無関係にその後1年間の総死亡および下肢切断のリスクが著しく増大することが、レトロスペクティブ単施設研究において見出された。この結果は、J Am Coll Cardiol誌6月26日号オンライン版に掲載された。

 心筋トロポニンT(cTnT)は心筋細胞損傷を示す高感度バイオマーカーであることが立証されている。また、cTnT濃度上昇は、慢性心不全患者、急性肺塞栓患者、末期腎臓病(ESRD)患者および一般集団における急性冠症候群(ACS)後の有害転帰と関連している。

 しかし、PAD患者のcTnT濃度上昇に臨床的意義があるのかは明らかではないため、ドイツの研究者らは症候性PAD患者を対象として、cTnTが追跡期間中の死亡率、下肢切断率および心血管アウトカムの予後に及ぼす影響を調査した。

 今回のレトロスペクティブ単施設研究の対象者は、緊急/待機的血管内血行再建術を受けるため著者らの病院に2007年1月~2007年12月まで入院した症候性PAD患者(Rutherford分類病期:2~5、Fontaine分類:IIb~IV)の1065連続例。12カ月以上または死亡まで追跡した。

 追跡不能となった53例、最後の14日以内にACSを発症した17例(1.6%)およびcTnT値に欠測のあった7例(0.7%)を除外し、最終的に988例(92.8%)を解析対象とした。ただし、慢性腎臓病(CKD)および腎機能低下は除外しなかった。

 入院時に血液サンプルを採取し、第4世代アッセイを用いてcTnT値を測定した。cTnT上昇の定義は、準拠集団の99パーセンタイルおよび検出下限値と一致している0.01 ng/mLとした。

 主要評価項目は総死亡および下肢切断で、副次評価項目は心筋梗塞、ACS、標的肢血行再建術だった。

 クロス集計においてχ2検定を行い、マン・ホイットニーのU検定で計量変数を比較した。Cox比例ハザードモデルを用いてベースラインのcTnT値とイベント発生の関係を検証した。

 対象者のベースライン特性は平均年齢が70.7±10.8歳、62.7%が男性で、44.9%が既知のCADを有しており、12.0%に脳梗塞の既往があった。

 ベースラインでcTnT≧0.01ng/mLだった患者群とcTnT<0.01ng/mLの患者群で比較したところ、cTnT≧0.01ng/mLだった222例(21.3%)のほうが、cTnT<0.01ng/mLの対象者よりも高齢、男性または糖尿病患者である割合が大きく、逆に高コレステロール血症または現喫煙者である割合は小さかった。cTnT上昇は腎機能低下、心血管疾患、脳血管疾患および重度PADとも関連していた。

 cTnT≧0.01ng/mLの患者群では、間欠性跛行(Rutherford分類:2~3)が623例中54例(8.7%)とcTnT<0.01ng/mLの患者群より少なかったが、重症肢虚血(Rutherford分類:4~5)が418例中168例(40.2%)とcTnT<0.01ng/mLの患者群より高率だった(P<0.001)。また、cTnT上昇している対象者のPADは遠位側に限局していることが多かった。

 解析の結果、cTnT濃度≧0.01ng/mL群のほうがcTnT<0.01ng/mL群よりも、追跡期間中の総死亡率(31.7% 対 3.9%、P<0.001)および下肢切断率(10.1% 対 2.4%、P<0.001)がそれぞれ有意に高かった。心筋梗塞発生率(4.1% 対 1.1%、P=0.003)も有意に高かった(図1)。

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