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Lancet Neurology誌から
血栓溶解療法が虚血性脳卒中患者の機能や生活の質を改善
生存率には影響なし、IST-3の長期追跡結果

2013/07/05
佐古 絵理=メディカルライター

 急性虚血性脳卒中に対するアルテプラーゼによる血栓溶解療法の効果を評価するIST-3the third International Stroke Trial)から、血栓溶解療法は長期生存率を改善しなかったが、機能や生活の質に関する指標は改善したことが示された。結果は6月21日、Lancet Neurology誌オンライン版に掲載された。

 IST-3は急性虚血性脳卒中患者を対象としたオープンラベルのランダム化比較試験であり、遺伝子組み換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)であるアルテプラーゼ(0.9 mg/kg)の静脈内投与を行った群(アルテプラーゼ群)と、標準治療のみを行った群(対照群)を比較した。

 既に報告されている6カ月後の成績では、自立した状態で生存していた患者の割合には両群に差がなかったが、機能予後はアルテプラーゼ群でより改善していた。今回の研究では、より長期の生命予後や機能予後が、アルテプラーゼにより改善するかを調べた。

 12カ国156施設で登録された虚血性脳卒中患者3035例のうち、長期(18カ月)追跡調査の選択基準に適合した2348例(アルテプラーゼ群1169例、対照群1179例)を解析した。

 主要評価項目は、自立した状態(Oxford handicap scale[OHS]スコアが6点満点中0~2点の場合と定義)で生存している患者の割合とした。副次評価項目は、生存率、OHSスコア、健康に関連した生活の質、総合的な機能、生活環境とした。

 生存率についてはKaplan-Meier生存曲線を作成し、ログランク検定を用いて両群を比較した。OHSは脳卒中の重症度を評価する尺度であるmodified Rankin scaleとほぼ同じものであり、自立度が高いほどスコアが低い。生活の質の評価にはEuroQoLを使用し、EQ utility index(+1:完全に健康な状態、0:死に等しい状態、-1:死よりつらい状態)やvisual analog scale(VAS)スコア(100:想像できる最善の健康状態、0:想像できる最悪の健康状態)を算出した。

 総合的な機能については、脳卒中により何か問題が残ったか、日常生活動作に他者の介助を必要とするかについて、「はい」または「いいえ」で答えるよう質問した。生活環境については、患者が自宅、血縁者の家、老人施設、介護施設、病院のうち、どこで生活しているか尋ねた。

 アルテプラーゼ群の18カ月間の死亡者は1169例中408例(34.9%)、対照群は1179例中414例(35.1%)であり、両群の生存率に有意差はなかった(ログランク検定、P=0.85)。

 18カ月後に自立した状態で生存していた患者は、対照群の1122例中352例(31.4%)に対し、アルテプラーゼ群では1117例中391例(35.0%)だった(補正オッズ比[OR]:1.28、95%CI:1.03-1.57、P=0.024)。またアルテプラーゼ群では、OHSスコアの分布が好ましい方向へシフトしていた(補正共通OR:1.30、95%CI:1.10-1.55、P=0.002)。

 アルテプラーゼ群(674例)および対照群(667例)の18カ月後のEQ utility index平均値はそれぞれ0.550および0.502であり、アルテプラーゼ投与がEQ utility indexの有意な上昇と関連していた(ベースライン時の予後因子で補正した解析でP=0.002)。

 しかし、VASスコアの平均値は、アルテプラーゼ群が62.07、対照群が60.57で、有意差はなかった(P=0.072)。自宅に住んでいた患者の割合にも、両群に有意差はなかった。

 著者らは、英国における2002年時点の推計では、自立できている脳卒中経験者の推定長期診療費が年間876ポンドだったのに対し、自立していない患者では年間1万1292ポンドだったことを例に挙げ、自立している患者の割合の差が小さかったとしても、大きな経済的効果があるはずだ、と述べている。

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