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J Am Coll Cardiol誌から
高齢女性はトラスツズマブ投与後の心不全・心筋症発生率が高い

2012/12/03
岡本 絵理=メディカルライター

 早期乳癌の補助療法としてトラスツズマブを投与された女性は、補助療法を実施しなかった早期乳癌女性と比較して、心不全または心筋症が発生するリスクが高いことが分かった。論文は、11月14日付のJ Am Coll Cardiol誌オンライン版に掲載された。

 乳癌の化学療法によく用いられるアントラサイクリンは、心不全や心筋症のリスクを高めることが知られている。より近年に開発された、抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブも、心毒性を引き起こす可能性がある。

 米国では乳癌と診断された女性の約4割が65歳以上であるとのデータがあり、心血管リスクは年齢とともに上昇することから、高齢者ではトラスツズマブなどの化学療法に伴う心毒性リスクについて理解しておく必要がある。

 そこで米国の研究者らは、Surveillance、Epidemiology、and End Results(SEER)―メディケアデータベースの登録者のうち、早期乳癌と診断された高齢患者を対象として、補助療法として投与されたトラスツズマブおよびアントラサイクリンと、心不全または心筋症の発生との関係を調べた。

 SEER‐メディケアデータベースは、16種類の腫瘍のレジストリをメディケア保険請求と関連付けたデータベースだ。その中から、2000年から2007年までに早期浸潤性乳癌との初回診断を受けた、67歳以上の女性4万5537例を特定した(平均年齢:76.2歳、標準偏差:6.2歳)。

 これらの患者を、(1)トラスツヅマブ群(単独投与または非アントラサイクリン系化学療法を併用):431例(1.0%)、(2)アントラサイクリン+トラスツズマブ(以下A+T)群:431例(0.9%)、(3)アントラサイクリン群(単独投与またはトラスツズマブを除く化学療法を併用):5257例(11.5%)、(4)その他の非アントラサイクリン系化学療法群:2712例(5.9%)、(5)補助療法非実施群:3万6700例(80.6%)に分類し、診断から3年間の心不全または心筋症の累積発生率を調べた。

 社会人口統計学的因子、乳癌特性、心血管状態により補正したポワソン回帰モデルを用い、補助療法非実施群を基準として、各群の累積発生率を比較した。

 トラスツズマブ群、A+T群、アントラサイクリン群の女性は、補助療法非実施群よりベースラインでの心血管疾患が少なく、若かった。また、病期やグレードが高い患者、腫瘍が大きい患者、陽性リンパ節が多い患者、乳房切除術を実施した患者が多かった。

 心不全または心筋症の調整3年累積発生率は、補助療法非実施群が100例につき18.1例であったのに対し、トラスツズマブ群は100例につき32.1例、A+T群は41.9例であり、いずれも上昇していた(P<0.001)。アントラサイクリン群の調整3年累積発生率は100例につき20.2例で、トラスツズマブ群より低かった。

 アントラサイクリンにトラスツズマブを追加することにより、心不全または心筋症の100例当たりの発生数は増加すると推定された(1年後の経過観察時には12.1例、2年後に17.9例、3年後に21.7例増加すると推定、P<0.001)。

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