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J Am Coll Cardiol誌から
Pim-1発現心前駆細胞が心筋再生促進の可能性
心不全患者の細胞を用いた動物実験の結果

2012/08/10
難波 寛子=医師

 ヒト心筋前駆細胞(hCPCs)にPim-1キナーゼを発現させたPim-1発現心筋前駆細胞hCPCeP)は、生着能と分化能に優れ、心機能修復能も高い可能性が動物実験で確認された。心不全患者から採取した細胞を用いて有用性を検討した研究結果で、論文は、7月23日、J Am Coll Cardiol誌オンライン版に掲載された。

 心筋再生療法の分野においては、心筋前駆細胞の機能の限界を打破する目的で遺伝子導入の可能性が期待されている。セリン・トレオニンキナーゼであるPim-1は、同じくセリン・スレオニンキナーゼであるAktの下流に存在し、Aktと同様に細胞の生存と代謝活性の促進、アポトーシス阻害、ミトコンドリアの整合性保持に働く。マウスを用いた過去の概念実証研究では、Pim-1の導入により心筋前駆細胞(CPC)の生存、生着および分化が促進されることが確認されていたが、臨床応用の可否を決断するためには、心不全患者の細胞を用いた研究結果が必要とされていた。

 今回の研究では、hCPCsは、CD34、CD45、CD2、CD16、CD31陰性でc-kit陽性の細胞とした。GFP(green fluorescent protein)を発現したhCPC(hCPCe)とhCPCePの形質導入には、レンチウイルスベクターであるLv-egfpとLv-egfp+pim1を用いた。

 細胞の特性に関する検討では、hCPCやhCPCeと比較して、hCPCePではday3の増殖が促進されていた(P<0.001、CyQUANT法にて確認)。Pim-1の阻害薬であるケルセタゲチンを用いたところ、day1(P<0.01)とday3 (P<0.001)ともに増殖が抑制された。また、hCPCePではday3の代謝活性も増大していることがMTTアッセイで確認された(P<0.001)。TRAP法で測定したテロメラーゼ逆転写酵素活性はhCPCeよりもhCPCePで有意に改善していた(P<0.05)。

 デキサメタゾン(DEX)処理後、心血管系への分化系列決定マーカー(MEF2C、フォンビルブラント因子〔vWF〕、GATA-6)のアップレギュレートは、hCPCeよりもhCPCePで顕著だった。Dex処理前はhCPCeとhCPCePの両方でMEF2CとGATA-6シグナルはみられないが、vWFには弱く反応していた。Dex処理後は3つのマーカー全てが増加し、形態的な変化も生じた。

 心筋修復能を評価する目的で、心筋梗塞を生じたSCIDマウスの心筋内に、hCPCeP、hCPCe、または担体のみの注射を行った。

 その結果、エコーで評価した心機能は、細胞注射後1週間では3群とも同様に低下していたが、4週後までにhCPCe群およびhCPCeP群のマウスで、担体群と比較して有意に改善していた(p<0.001)。4週後のhCPCe群とhCPCeP群の心機能に有意差はなかった(p<0.05)。4週から8週後までの期間において、hCPCeP群の左室駆出率(EF)と左室内径短縮率(FS)は改善した。しかし、hCPCe群では改善がみられず担体群と同等だった(P>0.05)。20週後にはhCPCeP群のEFは、hCPCe群の1.81倍、FSは1.86倍だった。

 血行動態に関するパラメーターも、20週後の時点においてhCPCe群および担体群と比較してhCPCeP群で有意に大きく改善した(それぞれP<0.01、P<0.001)。hCPCeP群では、hCPCe群と比較してdP/dtmaxとdP/dtmin(左室内の最大および最小圧変化率)がそれぞれ1.29倍と1.23倍となり、最大左心室圧は1.37倍となった。

 細胞移入後20週後の梗塞後心筋において、hCPCeP群のテロメア長はhCPCe群の2.32倍だった(P<0.05)。

 20週後の梗塞のサイズもhCPCeP群で有意に小さかった。梗塞後の損傷はhCPCeP群で左室自由壁の61.3%であったのに対し、hCPCe群では84.3%に及んでいた(P<0.05)。hCPCe群と担体群の梗塞のサイズに差はなかった。

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