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Lancet誌から
Y染色体は冠動脈疾患リスク上昇と関連
ハプログループI系統の男性は他の男性に比べリスクが50%高い

2012/03/01
西村 多寿子=東京大学

 冠動脈疾患の発症率は男性の方が女性より高い。男性における冠動脈疾患リスクとY染色体の配列多型の関係を調べるため、英国人男性のY染色体をハプログループに分類したところ、ハプログループI系統の男性はその他の系統の男性に比べて、冠動脈疾患のリスクが約50%高いことが分かった。この結果は2月9日、Lancet誌オンライン版に発表された。

 Y染色体ハプログループとは、父系で遺伝するY染色体のハプロタイプ(1塩基多型SNP]の組み合わせ)をまとめたものである。Y染色体の特異的領域(MSY:male-specific region of Y chromosome)の塩基配列により20の主要なハプログループに分かれるが、その系譜を遡ると人類の男性の共通祖先である「Y染色体アダム」に至る。

 Y染色体の基本的役割は性別を男性に決定することだが、多染色体性(主にXYY)による心血管死の増加や冠動脈疾患の父系遺伝など、Y染色体と心血管リスクの関連を示唆する報告もある。

 そこで、英国心臓財団などの支援を受けた国際研究グループは、2つの研究(BHF-FHS[横断研究]とWOSCOPS[前向き研究])のコホートから、相互に血縁関係のない英国籍の白人男性を抽出。冠動脈疾患がある男性(ケース)と、冠動脈疾患がなくケースとマッチさせた男性(コントロール)におけるY染色体と冠動脈疾患リスクの関係を検討した。

 さらに、動脈硬化と密接に関連するマクロファージや単球のトランスクリプトーム解析を、Cardiogenics Studyに登録した英国人男性のデータを用いて行った。

 英国人のY染色体多様性の研究データを基に、MSYにある11のSNP(M9、M35、M45、M89、M170、M173、M201、M207、M269、M304、SRY10831)を選択し、対象者のY染色体を欧州で主要な13のハプログループ(Y、BR、E1b1b1、F、G、I、J、K、P、R、R1、R1a、R1b1b2)のいずれかに分類した。

 BHF-FHS(1444例)とWOSCOPS(1534例)のコホートでは、13のハプログループのうち該当者がいたのは9系統(E1b1b1、F、G、I、J、P、R1、R1a、R1b1b2)で、I系統とR1b1b2系統を合わせると全体の90%を占めた。

 BHF-FHSコホートでは、I系統はその他の系統より冠動脈疾患のある患者が多かった(20%[166/811例] vs. 13%[80/633例]、P=0.0001)。年齢調整後も、I系統はその他の系統に比べて冠動脈疾患のリスクが高いことが確認された(オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[95%CI]:1.20-2.54、P=0.004)。
 

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