急性冠症候群(ACS)患者を対象にクロピドグレルとticagrelorを比較したランダム化比較試験PLATOのサブグループ解析で、クロピドグレル投与群だけでなくticagrelor投与群においても、プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用者に心血管リスクの上昇が見られたことが分かった。論文は、1月18日付のCirculation誌オンライン版に掲載された。
プロドラッグであるクロピドグレルは薬物代謝酵素の1つであるCYP2C19により活性化され、血小板凝集を抑制する。PPIも同じCYP2C19で代謝されることから、同時投与によりクロピドグレルの作用減弱が示唆されている。一方、ticagrelorは生体内での代謝活性化を必要とせず、PPIとの相互作用は知られていない。
そこで著者らは、PLATO試験でクロピドグレルまたはticagrelorに割り付けられたACS患者を対象として、PPI使用と心血管事象との関係について調べた。
PLATO試験は、ACS患者をクロピドグレル投与群(9291例)、ticagrelor投与群(9333例)にランダム化して心血管イベント抑制効果を比較した。ベースライン(ランダム化時点)で、患者からの自己申告を基にPPI使用状況を調べ、その後もフォローアップ時に服用状況を記録していた。PPIやその他の胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬など)の使用は、それぞれの患者の主治医の判断で決定された。
1次エンドポイントは12カ月間の心血管死亡・心筋梗塞(MI)・脳卒中を合わせた複合エンドポイント。2次エンドポイントは総死亡、心血管死亡または非致死的MI、MI、ステント血栓症、冠動脈バイパス術(CABG)と関連しない大出血に設定した。
Cox比例ハザードモデルを用いてPPI非使用者に対するPPI使用者のハザード比を算出した。解析はintention-to-treatで行い、エンドポイントの発生率はKaplan-Meier法により求めた。
PLATO試験登録者1万8624例のうち、1万8601例(99.9%)からベースラインのPPI使用状況に関する記録が得られた。そのうち6593例(35.2%)がPPI使用者だった。
PPI使用者はPPI非使用者と比較して、脂質異常症、スタチン投与、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、経皮的冠動脈インターベンション、CABG、慢性閉塞性肺疾患の既往が多く、うっ血性心不全の既往やST下降は少なかった。
循環器プレミアム:新着文献
Circulation誌から
クロピドグレルとPPIの相互作用は存在するか
ticagrelor投与群でもPPI併用者ではイベント上昇、PLATOサブ解析
2012/02/14
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