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JAMA誌から
心筋トロポニンIは心筋梗塞の早期診断に有用
血中濃度の経時的変化を見ることで判別能がさらに向上

2012/02/10
西村 多寿子=東京大学

 胸痛で受診した患者の急性心筋梗塞の判別に、高感度心筋トロポニンIhcTnI)および従来の心筋トロポニンIcTnI)が有用であり、それらの経時的な血中濃度の変化を評価に加えることで、判別能が向上することが明らかになった。この結果は、JAMA誌2011年12月28日号に掲載された。

 心筋梗塞の診断は、心筋トロポニンの99パーセンタイル超の上昇と、時間経過に伴うトロポニンの上昇・下降に基づくことが、国際的なコンセンサスとなっている。また、その診断ではより精度の高いアッセイの使用が推奨されている。

 近年、トロポニンの高感度アッセイが開発され、従来の検査法よりも微量のトロポニンが検出可能となった。だが感度が向上すると、特異度は不可避的に低下し、トロポニンが上昇した患者の絶対数増加につながる。

 このジレンマを克服するため、慢性症状によるトロポニン上昇を同定する方法が提案されたり、トロポニン以外のバイオマーカーも開発されている。しかし、これらのマーカーとトロポニンの比較、あるいは各マーカーとトロポニンを組み合わせて診断に用いた場合の有用性については不明な点が多い。

 そこでドイツ・ハンブルグ大学心臓センターの医師らは、hsTnIとcTnIの急性心筋梗塞の判別能を評価するとともに、それらの経時的な変化量の測定により予測精度が向上するかを調べた。

 2007年1月~08年12月に、胸痛を主訴として救急部を受診し、急性冠症候群が疑われた18歳~85歳の連続症例を登録した。4週間以内に大きな手術あるいは外傷を受けた患者、妊婦、薬物乱用者、貧血患者(ヘモグロビン<10g/dL)は除外した。

 受診時、3時間後、6時間後に採血し、cTnIとhsTnIのほかに10種類のバイオマーカー(H-FABP、GPBB、copeptin、GDF-15、myeloperoxidase、sVEGFR-1/sFLT-1、PlGF、CK、CK-MB、myoglobin)を測定した。

 最終診断は、2人の心臓専門医が入手可能な臨床・検査・画像所見から判断し、不一致がある場合は3人目の専門医の意見を求めた。患者を30日間追跡し、電話によるインタビューを行うとともに、病院記録や公的機関の死亡登録で死亡と心筋梗塞の発生を調査した。

 cTnIの検査にはArchitect STAT troponin I assay (Abbott Diagnostics社)を用いた。同アッセイの検出レベルは10pg/mL(範囲:0~5万pg/mL)で、99パーセンタイル値は32pg/mLである。

 一方、hsTnIの検査に使用したArchitect STAT High Sensitive Troponin (Abbott Diagnostics社)の検出レベルは3.4pg/mL(範囲:0~5万pg/mL)。参照集団での99パーセンタイル・カットオフ値は30pg/mLだが、B型ナトリウム利尿ペプチド上昇者を除く場合は24pg/mLとした。

 胸痛発生以降のバイオマーカーの時間的変化に基づいて、ROC曲線を計算した。また、各マーカーのROC曲線下面積およびhsTnIと組み合わせた場合のROC曲線下面積を算出した。さらに各マーカーのカットオフ値から、感度、特異度、陽性予測値(PPV:結果が陽性のときに本当に急性心筋梗塞である確率)、陰性予測値(NPV:結果が陰性のときに本当に急性心筋梗塞を除外する確率)を計算した。
 

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