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J Am Coll Cardiol誌から
TAVI施行例の3分の1に術後心房細動
発症例では脳卒中・全身性塞栓症のリスクが4.8倍に

2012/01/05
難波 寛子=医師

 経カテーテル大動脈弁留置術TAVI)後の新規発症心房細動NOAF)の発生率は約32%に上ることが明らかになった。J Am Coll Cardiol誌オンライン版に2011年11月29日、論文が掲載された。

 重症の大動脈弁狭窄(AS)症例で手術リスクが高い症例に対して、TAVIは手術に代わる治療法となった。また、NOAFは心血管インターベンションの合併症として知られており、周術期の心血管イベント発生および心血管死亡と関連することも分かっている。しかし、TAVI後のNOAFに関するデータは少なく、心血管イベントとの関連も明らかでなかった。

 本研究は、TAVI施行におけるNOAFの発生率と予測因子を明らかにし、予後を検討する目的で行われた。対象は症候性の重症AS患者で、2007年5月~2011年5月にカナダ・Laval大学のQuebec Heart and Lung instituteでTAVIを施行された195例。このうち慢性または発作性心房細動の既往がある57例が除外され、最終的に138例が解析の対象となった。TAVIはバルーン拡張型の弁(Edwards SAPIEN、SAPIEN XT、Edwards Lifesciences)を用いた。

 退院までの期間、心電図は継続して記録された。「心電図上30秒以上継続する心房細動(AF)を認める場合」をNOAFと定義した。NOAFの継続時間は、1分未満、1分~1時間、1~12時間、12~24時間、24~48時間、48時間以上に分類した。NOAFの管理は、ACC/AHAの最新ガイドラインに従って行った。心血管イベントはValve Aortic Research Consortiumの基準に従って定義した。死亡は心臓死と非心臓死に分類して記録した。

 手術は93.5%の症例で成功し、30日以内の死亡率は7.3%だった。術後脳卒中(30日以内)は8例(5.8%)に生じ、全例虚血性梗塞だった。末梢動脈疾患(PAD)の既往がない1症例において、経心尖部アプローチによるTAVIの2日後に左膝窩動脈下動脈閉塞に伴う急性の下肢虚血が生じた。

 TAVI後30日以内のNOAFが発生したのは44例(31.9%)、術後経過時間の中央値は48時間(四分位範囲[IQR]:0~72時間)だった。NOAF例のうち、術中に発症したのは16例(36.3%)、術後24時間以内に発症したのは2例(4.6%)だった。AFが一過性だったのは10例(22.7%)で、全例12時間以内に消失した。残りの34例(77.3%)は除細動を要した。うち19例でアミオダロン静注による薬物的除細動が、15例では電気的除細動が行われた。除細動は1例を除く全例で成功し、不成功例は退院時もAFが持続していた。

 NOAFを生じた44例中34例に対して、診断後直ちにヘパリンとワルファリンによる抗凝固療法が開始された。3例において、硬膜外カテーテル抜去ため抗凝固療法の開始が24時間遅れた。別の7例では、アスピリンとクロピドグレルによる抗血栓療法が継続された。

 NOAF例の入院期間は9日(IQR:7~14日)で、NOAF例を除いた残りの症例の入院期間(6日、IQR:5~9日)と比較して有意に長かった(P=0.0004)。

 NOAFの予測因子を調べる目的で行われた多変量解析の結果、心房が大きいこと(1mm/m2増加ごとのオッズ比[OR]:1.21、95%信頼区間[95%CI]:1.09-1.34、P<0.0001)と、経心尖部アプローチ(OR:4.08、95%CI:1.35-12.31、P=0.019)の2つが独立した予測因子だった。

 TAVI後30日以内のNOAFを予測するのに最良のカットオフ値は「エコーで測定した心房サイズが27mm/m2以上」であり、感度67%、特異度61%だった。ROC曲線下面積は0.71だった(95%CI:0.62-0.80、P=0.0001)。
 

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