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N Engl J Med誌から
新規抗血栓薬vorapaxarで大出血リスクが増加
早期中止になったTRACER試験が論文に

2011/12/06
難波 寛子=医師

 新規抗血栓薬vorapaxarを標準的な抗血栓療法に追加しても、急性冠症候群患者の予後を改善しない上に、頭蓋内出血を含む大出血のリスクを増大させることが明らかになった。これは、vorapaxarの有効性と安全性を確認する目的で行われた第3相試験TRACER(Thrombin receptor antagonist for clinical event reduction in acute coronary syndrome)で得られた結果で、N Engl J Med誌オンライン版に11月13日、論文が公開された。

 vorapaxarは、プロテアーゼ活性化受容体(PAR1)拮抗薬で、過去に行われた2つの第2相試験では、プラセボ群と比較して出血性合併症の発生に有意差はなく、心筋梗塞(MI)が少ない傾向にあることが報告されていた。

 本試験の対象は、来院前24時間以内に心筋虚血の急性症状を呈した患者で、(1)心筋トロポニン(IまたはT)かクレアチンキナーゼMB(CK-MB)が正常上限を超える、(2)新たに出現した0.1mV超のST低下、(3)連続した2つ以上の誘導での0.1mV超の一時的なST上昇(30分未満)――のいずれかを満たし、かつ以下の4項目のうち1つ以上を満たすこととした(55歳以上、MIまたは経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)の既往、糖尿病、末梢動脈疾患)。

 対象者を1:1の割合で、vorapaxar群(初期用量1日40mg、維持用量1日2.5mg)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。プラセボ群は、糖蛋白(GP)IIb/IIIa阻害薬内服の有無と、直接的トロンビン阻害薬か他の抗トロンビン薬を内服しているかにより層別化した。

 初回投与は、ランダム化後直ちに、遅くとも冠動脈血行再建術の1時間以上前に行った。維持用量は、観察期間中継続して投与した。治療は現行のガイドラインに従うことが推奨されたため、多くの対象がアスピリンとP2Y12阻害薬を内服していた。

 観察は、初回の入院中と1カ月、4カ月、8カ月、12カ月の時点、以後は6カ月ごととした。試験終了時には最終の受診を予定した。

 有効性に関する1次エンドポイントは、心血管死亡、MI、再入院を要する再虚血、緊急血行再建術再施行を合わせた複合エンドポイントとした。主要な2次エンドポイントは、心血管死亡、MI、脳卒中を合わせた複合エンドポイントとした。

 安全性に関する主要なエンドポイントは、Global Use of Strategies to Open Occluded Coronary Arteries(GUSTO)分類での中等度または重度の出血と、Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)分類での臨床的に有意な出血の複合エンドポイントとした。

 2007年12月18日から2010年6月4日までに、37カ国818施設で1万2944例が登録された。だが、2011年1月8日に行われた安全性に関するレビューの結果、予想を超える出血イベントの発生が明らかとなったことから、安全性評価委員会は試験の中止を勧告。1月13日、参加施設に対し、全対象者に試験薬剤の内服中止を指示し、最終の受診を促すよう通達した(関連記事12)。

 2群間の患者背景に差はなかった。観察期間の中央値は502日(四分位範囲:349-667)だった。761例(5.9%)が観察期間中に参加を取りやめた。

 入院からランダム化までの時間は、中央値で21.2時間(同:12.2-40.8)、試験薬剤への曝露期間は中央値386日(同:233-586)だった。試験薬剤の中断率は、vorapaxar群でプラセボ群よりもやや高かった(vorapaxar群28.2% vs. プラセボ群26.8%)。

 初回入院中、対象者の91.8%にクロピドグレル投与が、88.1%に心臓カテーテルが、57.8%にPCIが、10.1%にCABGが行われた。
 

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