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Circulation誌から
早期再分極と心血管死に有意な関連性なし
無症候の外来患者約3万例の心電図を対象とした後向き研究

2011/11/02
西村 多寿子=東京大学

 従来は問題なしと考えられてきた早期再分極が実は危険なのではないかという議論が注目されている。だが10月10日、Circulation誌オンライン版に発表された後向き研究の結果は、古典的な早期再分極の波形であれば問題はないというものだった。

 早期再分極とは、12誘導心電図でQRSとSTの境界部分が上昇する波形であり、心臓の器質的疾患がない健常者にも認められることがある。特に若年男性やアスリート、黒人に多いとされ、下壁誘導より側壁誘導で頻繁に観察される。

 最近の研究で、下壁誘導における早期再分極は心臓死のリスクが高いとの報告があったことなどを受け、「J波症候群やST上昇チャネロパチーの病理学的分類に含むべき」との仮説を立てる細胞生理学者もいる。だが、それらの研究や仮説が確認されると、アスリートの事前の健康評価や一般のスクリーニングにも多大な影響を及ぼす可能性がある。

 そこで米国スタンフォード大学の研究者らは、早期再分極の発生率と予後を検討するため、米国退役軍人管理局Palo Alto病院において1987年3月~1999年12月に、入院および外来患者4万5829例から取った安静時心電図をレトロスペクティブに調査した。

 除外基準は、急性冠症候群やその他の急性疾患の可能性がある入院患者、心電図上で心房細動/粗動、心拍数100回/分超、QRS時間120ミリ秒超、ペースメーカーリズム、心室早期興奮、急性心筋梗塞の所見がある場合とした。

 ST上昇の有無と心電図パターンによりJ波スラーに分類した。PR間隔を等電位線とし、振幅基準を0.1mV以上としたとき、ST上昇はQRS終末部で判定し、J波は小さな陽性波、スラーはQRS下降脚に伝導遅延がある場合とした。ST上昇は、近接する2つの誘導で所見のある場合とした(下壁:II、III、aVF、側壁:I、aVL、V4~V6、前壁:V1~V3)。

 主要アウトカムは、心血管死までの時間とした。死亡確認にはCalifornia Health Department ServiceとSocial Security Death Indexを利用した。

 対象となった2万9281例のうち87.2%は男性で、平均年齢は55±14歳。女性の平均年齢は56±17歳だった。人種は、黒人13%、ヒスパニック系6%、白人とその他81%だった。平均追跡期間は7.6±3.8年で、その間の死亡6739例、心血管死1995例だった。

 データをST上昇の有無と誘導の位置により層化したところ、下壁と側壁誘導のいずれもST上昇なし(2万8617例)、ST上昇が下壁誘導のみ(185例)、側壁誘導のみ(479例)、下壁と側壁(163例)、下壁・側壁・前壁の全て(119例)だった。
  

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