地域住民を対象としたコホート研究参加者でJUPITER試験の組み入れ基準を満たした約2000例のデータを分析したところ、冠動脈カルシウム(CAC:coronary artery calcium)は、高感度CRP(hsCRP)よりも心血管イベントの予測に優れている可能性があることが分かった。この結果は、Lancet誌8月20日号に掲載された。
近年、複数の大規模臨床試験において、スタチンを用いたLDLコレステロール(LDL-C)低下療法による心血管イベントの1次予防効果が明らかにされてきた。JUPITER試験では、正常LDL-C(130mg/dL未満)かつhsCRP 2mg/L以上の患者は、ロスバスタチン投与による利益があった(関連記事)。
だが、低リスク集団を対象にした場合、相対リスクの低下が顕著でも絶対リスクの低下は小さい。JUPITER試験の結果から、新たなスタチン治療対象者は米国で650万人と推定される中、より利益を得る患者を特定することは、スタチン使用の効率性と費用対効果の向上を目的とした公衆衛生の議論やガイドラインにも重要な示唆を与える。
そこで米国ジョンズ・ホプキンス病院の研究者らは、6つのコミュニティーの住民を対象とした前向きコホート研究(MESA;Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)のデータを利用し、CACでリスク層化が可能かを検討した。
MESAの登録期間は2000年7月~2002年9月、追跡期間の中央値は5.8年だった。既知の心血管疾患のない45~84歳の男女6814例を対象とし、各人種(白人、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、中国人)の冠動脈石灰化と心血管イベントの関係を検討した。
今回の研究は、MESA参加者の中でJUPITERの組み入れ基準を満たす2083例(31%)を分析対象とし、このうちhsCRPが2mg/L以上の950例をMESA JUPITER群、2mg/L未満の1133例を低hsCRP群とした。
CACの層化(Agatstonスコアで0、1~100、100超)を行い、冠動脈疾患(CHD)イベントおよび心血管疾患(CVD)イベントの発生率を調べて、スタチン治療で最も利益を受ける集団と最も少ない集団を同定できるか検討した。さらに、心血管マーカーとしてのCACとhsCRPの有用性を直接比較した。
CHDイベントは、心筋梗塞、CHD死、狭心症、蘇生された心停止とした。CVDイベントは、CHDイベントに加え、脳卒中(一過性脳虚血発作を除く)、脳卒中死、動脈硬化による死亡、その他の心血管死とした。
対象となった2083例の年齢(中央値)は67歳、女性比率は40%、Framingham risk scoreで10年のリスクは9.7%だった。hsCRP(中央値)は1.8mg/L(MESA JUPITER群:4.26 mg/L、低hsCRP群:0.85 mg/L)で、MESA JUPITER群は低hsCRP群に比べて、女性、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニックが多かった。
MESA JUPITER群(950例)のCACスコアは、0が47%(444例)、1~100が28%(267例)、100超が25%(239例)だった。CACスコア分布には男女差があり、スコア0は男性の40%、女性の53%であり、100超はそれぞれ31%と20%だった。
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