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Circulation誌から
アスピリンとスタチンは肺高血圧症に効果なし
血小板と内皮機能を標的にした初のRCT、6分間歩行距離に偽薬との差認めず

2011/06/10
山川 里香=医学記者

 肺高血圧症PAH)で見られる血小板凝集内皮機能不全が、アスピリンシンバスタチンによって軽減されるかをプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験(RCT)で検証したところ、いずれの薬剤にも有効性が認められず、試験は早期中止となった。この結果は5月18日、Circulation誌オンライン版に掲載された。

 PAHでは活性化血小板によりトロンボキサン(Tx)が産生され、血小板凝集、血管収縮、血管平滑筋肥大を来す。治療を行ってもTxA2とTxB2の産生亢進、PGI2産生低下が見られ、結果としてTxとPGI2の比が上昇する。

 PAH患者では可溶性Pセレクチン濃度が上昇しており、血小板から放出されたCD40リガンドが肺血管床全体で増加していることから、肺経由で血小板が活性化されることが示唆されている。

 アスピリンは、PAH患者のTxとPGI2の比を低下させ、血小板活性を阻害することで治療薬となる可能性がある。実際、モノクロタリン誘発肺高血圧動物モデルを用いた最近の研究で、アスピリンにより肺動脈圧が低下、右室肥大が軽減し、生存率が上昇したことが明らかにされている。

 またPAH患者では、一酸化窒素(NO)産生低下、内皮型NO合成酵素活性低下、酸化ストレス増大が認められ、それによる内皮機能不全が病態に関与している可能性がある。一方、スタチンを用いた動物実験やヒトでの試験から、同薬の血管平滑筋細胞増殖抑制・アポトーシス誘導作用による血管平滑筋の弛緩や、内皮型NO合成酵素の活性化による酸化ストレス・炎症の抑制が報告されている。

 そこで米国・ペンシルベニア大学の研究者らは、2007年1月~09年9月に米国4施設を受診した、両薬剤の有害事象リスク因子を持たない18歳超のPAH患者65例を対象にしたプラセボ対照二重盲検RCTを実施した。

 被験者は平均50.5±13.9歳で、女性が86.1%、非ヒスパニック系白人が60.0%、ヒスパニック系が13.9%、黒人が20.0%、アジア系が4.6%。特発性PAHが51.6%、遺伝性PAHが4.7%、全身性硬化症を伴うPAHが18.8%、他の結合組織疾患を伴うPAHが15.3%だった。

 被験者を、(1)アスピリン81mg+シンバスタチン40mg群(16例)、(2)アスピリン81mg+シンバスタチンのプラセボ群(16例)、(3)アスピリンのプラセボ+シンバスタチン40mg群(16例)、(4)アスピリンのプラセボ+シンバスタチンのプラセボ群(17例)(いずれも1日1回)──の4群にランダムに割り付けた。

 主要アウトカムは、ベースライン値で調整したランダム化6カ月後の6分間歩行距離(6MWD)とした。

 2次アウトカムは6MWD、血小板凝集測定値(血中TxB2値、血漿βトロンボグロブリン値、可溶性Pセレクチン血清濃度)、内皮機能測定値(上腕動脈FMD値、血漿von Willebrand因子濃度)、NTproBNP値、CRP値、酸化低比重リポ蛋白(LDL)値、WHO機能クラス、Borgの呼吸困難スコア、SF36スコアとした。
 

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