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Arch Surg誌から
飲酒翌日の手術はパフォーマンスが低下する
腹腔鏡手術シミュレーターで所要時間やエラー回数などを評価

2011/04/27
西村 多寿子=東京大学

 過剰にアルコールを摂取した翌日の手術は、午後4時開始であってもパフォーマンスが低下する――。そんな実験結果が、Arch Surg誌4月号に掲載された。

 二日酔いは、仕事の常習的欠勤や業績低下の誘因となり、米国では年間1480億ドルを超える損失を生んでいるとされる。飛行機操縦のように高度なスキルと安全性が求められる分野では、飲酒制限が設けられている。だが一般に、飲酒量や飲酒による能力低下は見過ごされがちで、特に、酔いが醒めても飲酒の影響が残る時間帯の能力低下は過小評価される傾向がある。

 過剰に飲酒した直後に手術をすればパフォーマンスが低下することは明らかだが、飲酒の影響の持続性に関する研究はほとんどなかった。そこで著者らは、高度な技術と空間認識能力が要求される腹腔鏡手術の専門家と初心者を対象とし、飲酒翌日のパフォーマンスの変化を評価する2つの実験を行った。

 実験1では、アイルランド・クィーンズ大学最終学年の男子学生16人が被験者となった。外科手術の経験はなく、手術シミュレーターMIST-VR(Minimally Invasive Surgical Trainer Virtual Reality)の操作経験もなかった。倫理審査委員会の承認を得た後、参加者を飲酒群と対照群に8人ずつランダムに割り付けた。

 実験2では、米国・イェール大学で250回を超える腹腔鏡手術経験を有する外科医6人と、MIST-VRのエキスパートユーザー2人が被験者となった。

 MIST-VRは、腹腔鏡下胆嚢摘出術で求められる基本的技術を含んだシステムで、段階的に複雑になる6つのタスク(術野確保、移動、走査、挿入と抜去、ジアテルミー[高周波凝固]、操作とジアテルミー)の仮想体験ができる。

 ベースラインとして、全被験者はMIST-VRのトレーニングを受けた。実験1では、タスクの難度を“中”に設定して、6つのタスクをそれぞれ3回ずつ3回試行した。実験2では、タスクの難度を“高”にして「操作とジアテルミー」のみ10回試行した。

 トレーニングを完了した被験者は、テスト前日の夜にレストランでディナーを食べた。その際、実験1の飲酒群と実験2の全被験者は、飲酒量は設定せず、自分が酔ったと感じるまで自由に飲むように指示された。実験1の対照群は、アルコールは一切飲まないこととした。被験者は深夜0時より前にレストランから自宅まで、翌日午前8時に自宅から実験室まで、それぞれ送迎された。

 テストは午前9時、午後1時、午後4時の計3回実施した。実験2の被験者は、初回のテスト開始直前にアルコール呼気検査を受けた。

 主要アウトカムは、タスク完了までの時間(秒)、エラー回数、ジアテルミーの効率(平均焼灼時間/至適焼灼時間)とした。実験1は繰り返しのある二元配置分散分析を用い、要因1を飲酒 vs. 対照、要因2を実験の時間(ベースラインと3回のテスト)とした。実験2は繰り返しのある一元配置分散分析を行い、実験の時間によるパフォーマンスの違いを比較した。
 

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