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Arch Surg誌から
高度肥満者の2型糖尿病を手術で治す
胃バイパスvs胃緊縛、胃バイパスvs袖状胃切除、どちらが優れる?

2011/03/14
西村 多寿子=東京大学

 病的肥満に対する治療法の1つとして、欧米諸国では外科治療が広く行われている。術式による効果の差を比較検討した2報の研究論文が、Arch Surg誌2月号に掲載された。

 腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術(laparoscopic Roux-en-Y gastric bypass;RYGB)は、内容積15~30mLの小さな胃嚢を小腸へ吻合し残った胃と小腸をバイパスすることで、食事摂取を制限し栄養吸収を阻害することを目的とする。

 腹腔鏡下胃緊縛法(laparoscopic gastric banding;LB)は、調整可能なシリコンのバンドを胃上部に巻きつけて分割し、食事摂取を制限する。

 米国におけるRYGB実施件数は、年間18万件と推定されている。LBはRYGBより低侵襲で比較的安全な外科治療の選択肢として、米食品医薬品局(FDA)が2001年に承認した。LBの実施件数も年々増加傾向にあり、専門医療機関で実施される肥満手術の約4分の1はLBという報告もある。

 最初の論文(Campos GM, et al. Arch Surg. 2011;146:149-55.)は、米国カリフォルニア大学のチームが行ったRYGBとLBの2コホート・ペアマッチ研究である。術後1年の超過体重減少、糖尿病およびQOLの改善において、RYGBはLBより優れていると結論された。

 本研究の対象は、2004年1月~08年1月にRYGBまたはLBによる肥満手術を初めて受けた患者とした。同大学の臨床データベースから患者の人口統計学的特性、術前と術後の情報を抽出し、さらに手術報告、麻酔記録、退院サマリー、臨床追跡記録を調査した。

 主要評価項目は、周術期と術後の合併症、再手術、術後1年の超過体重減少、2型糖尿病の経過、QOLとした。

 期間中に手術を受けた741例中、RYGBは557例(75%)、LBは148例(20%)だった。LBの連続症例100例と、性別、年齢(±5歳)、人種、体重指数(BMI[±3])、2型糖尿病の有無を対応させたRYGBの100例について、評価項目の群間比較を行った。

 LBで使用するデバイスはLap Band(Allergan社)で、サイズは執刀医が判断した。QOLの評価には、Moorehead-Ardelt Quality of Life Questionnaire II を用いた。

 手術時間と入院期間が有意に短いのはLB群だったが、術後の外来受診回数はLB群の方が多かった。術後1年のデータが入手できたのはRYGB群の92例、LB群の93例だった。死亡例はなかった。

 術後1年間の合併症の発生は両群間に有意差はなかったが(14例 vs. 11例、P=0.83)、30日以内の早期合併症はRYGB群に多く(11例 vs. 2例、P=0.01)、再手術はLB群の方が多かった(12例 vs. 2例、P=0.009)。

 超過体重減少率は、RYGB群がLB群より優位だった(64% vs. 36%、P<0.01)。2型糖尿病患者数は各群34例で、その多くが経口血糖降下薬を服用していた。術後1年の時点で糖尿病が寛解または改善した患者は、RYGB群の26例(76%)に対し、LB群は17例(50%)だった(P=0.04)。

 QOLについても、RYGB群の方がLB群より良好だった。ただし5つの領域別の検討では、自己尊重、身体、社会的関係ではRYGB群は優位だったが、仕事とセクシャリティでは差はなかった。

 著者らは、ルーワイ胃バイパス術は胃緊縛法に比べて超過体重がより減少し、糖尿病やQOLの改善も見られることから、リスクとベネフィットを勘案すると胃バイパス術の方が優れていると結論づけた。
 

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