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Lancet誌から
大気汚染は心筋梗塞の重要な誘因に
個人へのリスク寄与度は低くても曝露率が高いため集団への影響は大

2011/03/08
山川 里香=医学記者

 心筋梗塞MI)の種々の誘因を個人レベルと集団レベルで比較したところ、大気汚染は個人にとってリスクが低い誘因であるものの、曝露率が高く集団の健康負担が重くなるため、公衆衛生的には無視できないリスク因子であることが分かった。ベルギー・ハッセルト大学の研究者らがLancet誌に報告した。

 MIの1次予防はアテローム性硬化症の進行に基づいてなされるべきだが、MI発症を促進し、介入の影響を受けやすい他の因子も、公衆衛生として取り組む上で政策決定者には有用となるはずだ、と著者らは考えた。

 人口寄与割合(population attributable fraction;PAF)は、疫学的所見の公衆衛生的意義を提示するのに有用な方法で、リスク因子を取り除いた場合に回避できる症例の割合を推定できる。

 人口寄与リスクは、リスク因子への曝露と、そのリスク因子の集団内での曝露率との関連性の強度に依存しており、公衆衛生行政にとって最も有用な疫学的変数と考えられる。本研究では、PAFアプローチを用いて集団におけるMIの誘因を比較した。

 著者らは1960年1月~2010年1月のPubMedとWeb of Science citation databasesを検索し、PAFの算出が可能な、MIの誘因に関する研究を特定した。患者個人レベルで急性MIの誘因13種の検討を行った研究36件を採用し、メタ解析を行った。内訳は、症例クロスオーバー研究28件、時系列研究7件、症例対照研究1件だった。

 環境レベルのみで行われた研究は除外したが、症例対照研究と症例クロスオーバー研究は採用した。大気汚染の指標として直径10μm以下(PM10)または直径2.5μm以下(PM2.5)の粒子状物質を用いた研究のみを選択した。

 大気汚染への集団の曝露率は100%と推定した。これは、効果推定値を提示した疫学的研究でなされた仮定と一致している。同一の誘因について複数の研究が存在する場合には、各研究のサンプルサイズで加重して、そのリスク因子の平均曝露率を算出した。

 過剰なリスクが「ある、なし」の二者択一で表されている大部分の誘因とは異なり、大気汚染の影響は連続的尺度で表す必要がある。従って、PM10が30μg/m3、10μg/m3、1 μg/m3減少した場合の3種のシナリオを提示して、集団のMI発生に対するPM10の影響を推定した。

 精査した疫学研究のうち、36件において詳細まで十分に記載されていた。研究対象となった集団における誘因の曝露率の範囲は、コカイン使用の0.04%から大気汚染の100%までだった。

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