主に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板療法時、クロピドグレルとプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用による抗血小板活性の減弱や心血管イベント再発リスクの上昇が大きな議論となっている。だが脳血管疾患の患者を対象とした同様な検討は、なされていない。
今回、カナダ・トロント大学などの研究チームは、脳卒中後の患者に対するクロピドグレルとPPI併用の安全性を検討するため、オンタリオ州の健康情報データベースを利用してコホート内症例対照研究を行った。その結果、PPIの併用で脳卒中による再入院の有意なリスク上昇は認められなかったと、Stroke誌2011年1月号に発表した。
対象は、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)により入院し、退院後30日以内にクロピドグレルの新規投与を受けた同州在住66歳以上の男女とした。調査期間は2002年4月~2008年9月で、入退院、調剤、入院中と外来での医療サービス情報をデータベースから入手した。
退院日をコホート登録日とし、退院から最長で180日間追跡した。主要分析は、脳卒中またはTIAによる再入院とPPI併用の関係、2次分析は総死亡とPPI併用の関係とした。
入院前にクロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモールの服用歴のある患者、長期療養施設に入所中の患者、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法でPPIを服用していた患者、退院後に頸動脈内膜摘除術を受けた患者、コホート登録日とクロピドグレル初回処方日の間に脳卒中で再入院した患者は対象から除外した。
本研究の「ケース」は、退院後180日以内にアウトカムが発生した場合とし、ケースの再入院日を指標日(index date)とした。「コントロール」は指標日まで再入院しなかった患者とし、年齢、性別、アウトカムのタイプ(脳卒中かTIA)をケースとマッチさせて、1ケースにつき最大4例までランダムに抽出した。
PPI併用の時期は、指標日から近い順に「現在使用中」(指標日から60日前まで)、「最近使用」(61~180日前)、「しばらく前に使用」(181~365日前)に分類した。
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