降圧薬を使用したランダム化比較試験(RCT)に参加した約32万例の患者データを使用して、複数の降圧薬と癌の関係を検討するネットワーク・メタ解析を行ったところ、降圧薬の単剤投与と癌および癌関連死の間には有意な関係は見られなかった。ただし、ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用では癌リスクの増加が認められた。この結果は11月30日、Lancet Oncol誌オンライン版に掲載された。
降圧薬と発癌の関係については30年以上議論されている。最近発表されたShipahiらのメタ解析では、ARBと癌の関係が示唆されたが、これと相反する観察研究のデータもある。
そこで、米国ニューヨーク大学を中心とする研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochranデータベースを用い、1950~2010年に行われた降圧療法のRCTを検索し、追跡期間1年以上、登録患者100例以上の試験を抽出した。
主要アウトカムは癌の発生と癌関連死とし、ネットワーク・メタ解析と直接比較のメタ解析を行った。さらにRCTの中間解析に相当するTrial Sequential Analysis(TSA)を行い、メタ解析の有効性と無益性を評価した。
解析対象となったRCTは70件。うち62件は2群間、8件は3群間比較で、群の総数は148だった。登録患者数は32万4168例で、平均追跡期間は3.5年(範囲:1~9年)だった。
癌発生率については、プラセボ群(2.02%)と各降圧薬群の間に有意差はなかった。各群の癌発生率とネットワーク・メタ解析(固定効果モデル)の結果は、ARB(2.04%、オッズ比[OR]:1.01、95%信頼区間[95%CI]:0.93-1.09)、ACE阻害薬(2.03%、OR:1.00、95%CI:0.92‐1.09)、β遮断薬(1.97%、OR:0.97、95%CI:0.88‐1.07)、Ca拮抗薬(2.11%、OR:1.05、95%CI:0.96‐1.13)、利尿薬(2.02%、OR:1.00、95%CI:0.90‐1.11)、ほかの降圧薬(1.95%、OR:0.97、95%CI:0.74‐1.24)だった。
ACE阻害薬とARB併用群の癌発生率は2.30%だった。固定効果モデルでは、プラセボ群と比較して癌発生リスクの増加が認められた(OR:1.14、95%CI:1.02‐1.28)が、ランダム効果モデルでは有意なリスク増加はなかった(OR:1.15、95%CI:0.92‐1.38)。
循環器プレミアム:新着文献
Lancet Oncol誌から
降圧薬による発癌リスク、単剤投与では増加せず
ACE阻害薬とARBの併用ではリスク増、ネットワーク・メタ解析の結果
2010/12/17
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