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J Am Coll Cardiol誌から
アスピリン服用はACS後のイベント予測因子に
心筋梗塞再発や再虚血が増加、ただし総死亡は有意増加せず

2010/10/29
難波 寛子=医師

 アスピリン急性冠症候群ACS)の予防や治療に有用と考えられてきたが、TIMI(Thrombolysis In Myocardial Infarction)研究のデータベースを用いた解析から、ACS発症前にアスピリンを内服していた患者は、内服していなかった患者と比較してACS発症後の心筋梗塞の再発や再虚血が多いことが分かった。ただし死亡率に差はなかった。この結果は、J Am Coll Cardiol誌10月19日号に掲載された。

 血栓形成では血小板が重要な役割を果たすため、アスピリンはACSの1次予防や2次予防、治療に有用であると見なされている。一方で、最近の研究により、発症前にアスピリンを内服していたACS患者は非内服患者と比較して予後が不良であると報告されている。この逆説的な結果に関して、明確な結論は得られていなかった。

 そこで米国シカゴ大学の研究者らが、TIMI研究として行われた16の多施設共同前向き無作為比較試験のデータベースを利用して、ACS患者6万6443例を対象に、発症前のアスピリン内服歴とアウトカムの関連を検討した。

 対象は全例18歳以上で、ACSの診断基準を満たしており、発症前のアスピリン服用歴が記録されていた患者とした。発症前に少なくともアスピリンを1週間以上継続的に内服していた場合をアスピリン内服歴ありとした。入院直前の短期間投与や救急室での投与は発症前内服に含めなかった。

 ランダム化が行われた期間は1989年10月から2005年10月まで。観察期間は概ね1年以内だった。

 エンドポイントは総死亡、心筋梗塞の再発、再入院を要する虚血の再発、再血行再建を要する虚血、脳卒中とした。

 6万6443例中、26.8%がアスピリン服用者(アスピリン群)だった。アスピリン群は非アスピリン群と比較して約3.5歳高齢で、冠動脈疾患(CAD)の危険因子が多く、過去のCAD、心筋梗塞(MI)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)、うっ血性心不全、脳血管疾患の既往が多かった(すべてP<0.001)。

 また、発症前にスタチン、β遮断薬、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、硝酸薬などの循環器系薬剤を内服していた患者もアスピリン群に多かった。TIMI UA/NSTEMIスコア、STEMIスコア共にアスピリン群の方が高かった(P<0.0001)。アスピリン群はバイオマーカーが低く(65.5%対85.1%、P<0.0001)、初発時ST変化に乏しかった(67.0%対77.7%、P<0.0001)。喫煙者はアスピリン群の方が少なかった(29.6%対48.1%)。

 不安定狭心症(UA)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)をすべて対象に含む試験に参加した1万8637例(アスピリン群6824例、非アスピリン群1万1813例)を母集団に行ったサブ解析では、アスピリン群にはUAが多く、STEMIが少なかった。非アスピリン群では逆だった。

 最初のACSの重症度は2群間で有意差があった(P<0.0001)。多変量解析を用いて患者背景を調節した後も、発症前のアスピリン使用はACSが軽症であることの予測因子だった(STEMI対UA/NSTEMI、オッズ比[OR]:0.59、95%信頼区間[95%CI]:0.54-0.64)(NSTEMI対UA、OR:0.57、95%CI:0.52-0.63)。


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