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JAMA誌から
心臓手術時の輸血基準は厳格にすべき
輸血実施基準の違いによる安全性を比較した初のRCT

2010/10/28
西村 多寿子=東京大学

 心臓手術患者に対する輸血製剤の制限的使用と非制限的使用の安全性を比較したランダム化比較試験の結果、術後30日間の死亡と入院中の重症疾患の複合アウトカムの発生について両群間に有意差は見られなかった。だが赤血球輸血の単位数増加は、輸血実施基準と独立した死亡と合併症の危険因子だった。この結果は、JAMA誌10月13日号に掲載された。

 周術期の赤血球輸血は、術後の貧血が死亡の危険因子であることに基づいている。一方、輸血実施に制限的な方針をとる根拠には、輸血による利益の欠如に加え、医療費の増加や輸血に関連した有害作用の報告が数多く存在することが背景にある。輸血製剤の制限的使用は非制限的使用より死亡率の減少に効果があるとの報告もあるが、心臓手術患者を対象にしたランダム化比較試験はこれまでなかった。

 TRACS(Transfusion Requirements After Cardiac Surgery)と名付けられた本試験は、ブラジル・サンパウロ大学病院で2009年2月~10年2月にオンポンプCABG心臓弁置換または心臓弁修復の待機的手術を受けた18歳以上の連続症例を対象とした。

 手術開始からICU退室の間でヘマトクリット(Ht)値が24%未満になった場合に限り輸血を実施する「制限群」と、Ht値が30%未満になった場合に輸血を実施する「非制限群」を比較して、有害アウトカムの発生に差があるかを検討した。

 輸血は1回につき1単位(250~350mL)とし、Ht値の測定は手術室で最低3回、ICUで1日2回とした。

 1次アウトカムは、術後30日間の総死亡、入院中に発生した重症疾患(心原性ショック、急性呼吸促迫症候群、透析または血液濾過を要する急性腎障害)の複合とした。2次アウトカムは、合併症の発生(呼吸器系、心臓系、神経系、感染症、炎症)、再手術を要する出血、ICU入室および入院の期間とした。

 本研究は非劣性試験であり、1次アウトカムの発生を10%と推定した。両群間に差がないと予測し、非劣性の境界をマイナス8%に設定した。
 

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