心臓手術後に心嚢液貯留が持続している患者に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のジクロフェナクあるいはプラセボを投与し、心嚢液貯留の変化と遅発性心タンポナーデの発生を比較した多施設二重盲検ランダム化試験の結果、ジクロフェナクの投与は心嚢液の減少や心タンポナーデの予防と関連しなかった。この結果はAnn Intern Med誌2月2日号に掲載された。
無症候性の心嚢液貯留は心臓手術後にしばしば発生し、心タンポナーデに至ることもある。術後7日以降に心嚢液貯留が認められた場合、炎症が原因とみてNSAIDが投与されることが多い。専門家や臨床ガイドラインもそれを推奨しているが、実際にNSAIDの有効性を調べた研究はこれまでなかった。
本研究は、フランスの術後心臓リハビリテーションセンター5施設で、2006年2月から08年12月までの間に実施された。心臓手術後に入院したすべての患者(5455例)にスクリーニング検査を行い、経胸壁心エコー検査で心嚢液の局所的貯留が10mm以上もしくは全体的(心嚢液貯留グレード0~4 の5段階のうち、グレード2、3、4に該当)に認められた18歳以上の患者を対象とした。
196例が登録され、ブロック無作為化の方法でジクロフェナク群(98例)とプラセボ群(98例)に割り付けた。ジクロフェナクは50mg×2/日を14日間投与した。ベースラインの心エコー検査は術後7日から30日の間に実施し、2回目はジクロフェナク投与開始から14日後に行った。冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者に低用量アスピリンを、弁置換術か弁修復術を受けた患者にはビタミンK拮抗薬を、それぞれ投与した。
1次エンドポイントは、ベースラインと2回目の心エコー検査の間の心嚢液貯留グレードの変化。2次エンドポイントは、遅発性心タンポナーデの発生頻度、心嚢液貯留グレードで1グレード以上の低下があった患者数、心嚢液の貯留状況(ミリメートル単位で記録)とした。
患者の平均年齢は63歳、男性比率は80%だった。CABGを受けた患者はジクロフェナク群59例に対しプラセボ群56例、大動脈弁置換術を受けた患者はジクロフェナク群34例に対しプラセボ群31例、僧帽弁置換術を受けた患者はジクロフェナク群11例に対しプラセボ群14例だった。
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