鉄欠乏を伴う慢性心不全患者に対し、鉄剤(カルボキシマルトース鉄)を静脈内投与したところ、症状や運動能、QOLの改善が認められ、有害事象の発生は許容範囲だった。この結果は11月17日、N Engl J Med誌オンライン版に掲載された。
慢性心不全の管理は近年飛躍的に向上したが、患者の日常生活には制限も多い。血行動態不良と直接関係がない複数のメカニズムが、慢性心不全患者の運動耐性低下に関係している。中でも、運動中の不十分な酸素供給と骨格筋による酸素利用の低下、貧血が臨床症状を悪化させている可能性がある。
鉄は、酸素の取り込み、移送、貯蔵、酸化的代謝に重要な役割を果たし、赤血球の産生にも関与する。貧血の有無を問わず鉄欠乏状態は好気的パフォーマンスを減弱させるが、心不全患者は鉄貯蔵の減少や吸収障害、網内系細胞で処理された鉄の利用能低下の結果、鉄欠乏状態を来しやすいことが指摘されている。
そこで、FAIR-HF(Ferinject Assessment in Patients with Iron Deficiency and Chronic Heart Failure)と名付けられた二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験が、2007年6月から2008年12月までドイツなど11カ国75施設で実施された。
対象は、慢性心不全を有し、NYHAの心機能分類でII度またはIII度、左室駆出率40%以下(NYHA II度の場合)または45%以下(NYHA III度の場合)、ヘモグロビン値95~135g/L、鉄欠乏のある例(血清フェリチン100μg/L未満、またはトランスフェリン飽和率20%未満で血清フェリチン100~299μg/L)とした。コントロールできない高血圧、そのほかの著明な心疾患、炎症、肝または腎機能障害がある例は除外した。
カルボキシマルトース鉄の投与量は、Ganzoniの計算式を用いて、鉄補充が完了するまでは200mg/週を投与し、その後は4週ごとに24週まで投与した。4、12、24、26週に有効性と安全性の評価を行った。
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