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Ann Intern Med誌から
ワルファリンの利益は脳卒中既往者と超高齢者で最大
心房細動患者約1万4000例のATRIA研究コホートを層別解析

2009/09/18
小塩 尚代=メディカルライター

 非弁膜性心房細動患者を対象とした大規模コホート研究の層別解析で、ワルファリン治療による利益は脳卒中リスクが高い患者で大きく、虚血性脳卒中既往者と85歳以上の高齢者で特に大きいことが分かった。この結果はAnn Intern Med誌9月1日号に掲載された。

 現在のいくつかの臨床ガイドラインは、虚血性脳卒中リスクが中等度から高度の心房細動患者にワルファリンを推奨している。しかし、これらのガイドラインは主に15年以上前の研究に基づいており、ワルファリンによる出血リスクについては明確にしていない。さらに、リスクに基づいて抗凝固療法を実施した場合の「正味の利益」は、長期追跡された大規模集団では証明されていない。

 米国マサチューセッツ総合病院の研究者らは、ATRIA(AnTicoagulation and Risk Factors In Atrial Fibrillation)研究のコホート、すなわち米国最大の非営利HMO(会員制医療保険組織)であるKaiser Permanente の施設で治療された非弁膜性心房細動の成人患者1万3559例を対象に、ワルファリン治療の正味の利益を数値化することを試みた。

 これらの患者を同組織のデータベースと診療記録を用いて、1996年7月から2003年9月まで追跡した(組み入れ前のデータは後ろ向きにさかのぼって調査し、組み入れ後は前向きに追跡)。

 ワルファリンによる「正味の利益」の定義は、ワルファリンにより予防された血栓塞栓イベント(虚血性脳卒中+全身性塞栓症)の年率から、ワルファリンにより誘発された頭蓋内出血の年率に重み付け係数を掛けて引いた値とした。

正味利益=(ワルファリン治療なしのTE率 - ワルファリン治療下のTE率)
    - 重み付け係数×(ワルファリン治療下のICH率 - ワルファリン治療なしのICH率)
        TE:血栓塞栓イベント、ICH:頭蓋内出血

 重み付け係数は、頭蓋内出血の方が予後不良であることを考慮して基本的には1.5を使用したが、1.0あるいは2.0とした解析も実施した。正味の利益は脳卒中と頭蓋内出血の危険因子により補正した(ただし、CHADS2スコアによる層別解析は補正せず)。

 組み入れ時点でワルファリンを服用していた患者は53%だった。ワルファリン服用患者においてINR(プロトロンビン時間の国際標準化比)が治療域(2.0~3.0)だった期間の割合は65.4%だった。追跡期間中に発生した血栓塞栓イベントは1092件(虚血性脳卒中1017件、全身性塞栓症75件)、頭蓋内出血は299件だった。全コホートにおけるワルファリンの正味の利益は0.68%/年(95%信頼区間[95%CI]:0.34-0.87)だった。

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