日経メディカルのロゴ画像

Circulation誌から
街頭での心停止例救命にはAHA提唱のAED配置密度が必要
欧州の指針では2割しか対処できず、コペンハーゲンでの実例による研究結果

2009/08/21
小塩 尚代=メディカルライター

 コペンハーゲン市中の公共スペースで起きた院外心停止の発生場所と件数を調査した結果、自動体外式除細動器AED)の設置範囲は欧州のガイドラインでは不十分で、米国心臓協会(AHA)のガイドライン程度に広げる必要のあることが分かった。この結果はCirculation誌8月11日号に掲載された。

 市民による除細動は現在多くの国で実践されているが、救命のためには心停止の発生事例が多い場所へAEDを設置しておく必要がある。AEDの設置に関するガイドラインは欧州と米国で異なっており、European Resuscitation Council(ERC)のガイドラインは心停止が2年に1例以上発生すると予想される場所への設置を推奨しているのに対し、AHAのガイドラインは5年に1例以上発生が予想される場所への設置を推奨している。

 しかし、AEDの設置方針がその効果やコストに与える影響を調べたデータはほとんどない。そこでデンマーク・ゲントフテ大学の研究者らは、コペンハーゲン市の公共スペースで起きた心停止の発生場所を調べ、上記2つのガイドラインに従ってAEDを設置した場合にカバーできる心停止例の割合を比較した。また、実際に設置されているAEDの場所が適切かどうかも検討した。

 対象は、1994年1月~2005年12月にコペンハーゲン市(人口約60万人、面積97km2)の公共スペースで突然の心停止を起こした患者すべてとした(ただし1999年は記録が不完全だったため0例とした)。心停止の発生場所と、2005年中に自治体や地域主導で公共の建物に設置されたAED 104台の場所を調査し、コペンハーゲン市を100×100mごとの碁盤目状に区切った地図に、これらの場所を入力した。

 調査期間中に1274人が、公共スペースで心停止を起こしていた。心停止の発生率は鉄道主要駅(100×100mの区画内で5年に1.8件)および人口密度の高い公共スペース(大きな広場・歩行者専用地域・遊園地など、同区画内で5年に0.6件)で高かった。

 調査期間中に使用されたAEDは1台もなかった。AEDが調査開始時から設置されており、同じ区画内のすべての心停止をカバーできたと仮定すると、29件での使用が可能だった。このうち11例(38%)は1カ所の鉄道の駅で発生したが、AEDは同一区画内にあったものの市役所の中に設置されていた。

 今回の調査結果にERCのガイドラインを適用すると、心停止の発生が多い地域(2年に1件以上)は市の面積の1.2%に過ぎず、これらの場所にAEDを設置するには125台が必要で、それによってカバーできる心停止例は全体の19.5%(249件)にとどまった。

 一方AHAのガイドラインを適用すると、心停止の発生が多い地域(5年に1例以上)は市の面積の10.6%、必要なAEDは1104台と多くなるが、それにより心停止全例の66.8%(851例)をカバーできると考えられた。

 

この記事を読んでいる人におすすめ