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Hypertension誌から
DPP4阻害薬とACE阻害薬の併用で血管浮腫リスクが増加
vildaglipin第3相試験と他のDPP4阻害薬の市販後調査を分析

2009/07/28
西村 多寿子=東京大学

 新しい2型糖尿病治療薬として注目されているジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬DPP-4阻害薬)とACE阻害薬の併用による有害事象として、軽度から中等度の血管浮腫が増加する可能性が示唆された。この結果は7月6日、Hypertension誌オンライン版に掲載された。

 DPP-4は、インクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)やグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)を分解するとともに、サブスタンスPなど他のペプチドの分解にも関与している。血管拡張作用のあるサブスタンスPはアンジオテンシン変換酵素(ACE)により分解されるが、ACEが阻害されると、DPP-4により不活化される。したがってDPP-4阻害薬は、GLP-1やGIPの血中濃度を増加させることで血糖コントロールの改善が期待されるが、サブスタンスPなどほかのペプチドの分解を抑制することで、理論的には有害な作用も起こり得る。

 本研究は、DPP-4の阻害が血管浮腫のリスクになるという仮説を検証することを目的とし、(1)vildagliptinの第3相試験で、同薬を投与された患者と対照薬を投与された患者の血管浮腫の発生を比較し、(2)sitagliptin市販後調査とPubMedを使った文献検索で血管浮腫の有害事象報告例を調査した。

 2005年初頭、血管浮腫はvildagliptinの臨床試験における安全性評価イベントに指定され、治験担当医から提出された有害事象報告の中で、血管浮腫関連の75の指定用語のうち1つ以上を含む報告が本研究の対象となった。

 有害事象報告のほかに医師の記録や救急病棟記録などを基に、製薬会社のCRS(clinical research scientist)が、症状発現日、浮腫の位置、治療内容、併用薬の投与開始日と終了日などの必要事項を、「血管浮腫および血管浮腫に関連したイベント質問紙」に記入した。ただしCRSは、vildagliptinと対照薬の割り付けは知らされなかった。研究グループは、盲検が開鍵されたデータを確認した上で、vildagliptin群と対照薬群の血管浮腫リスクを、プールされたデータとメタ解析により算出した。

 sitagliptinの市販後調査については、米食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)から情報を入手し、PubMedを使った文献検索では、sitagliptin、saxagliptinalogliptinの臨床試験で血管浮腫の有害事象を報告している英語文献を調査した。

 血管浮腫が確認された患者は1万3921例中27例で、うち19例がvildagliptinを服用していた(軽度10例、中等度4例、重症5例)。好発部位は、顔面、頬、眼窩周囲、咽喉、舌だった。血管浮腫の発生リスクは、vildagliptin群の0.22%に対し対照薬は0.15%で、vildagliptin投与と血管浮腫の発生に有意な関係は認められなかった(オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間[95%CI]:0.65-3.41)。

 しかし、ACE阻害薬を併用している患者に限定すると、vildagliptin投与と血管浮腫の発生には有意な関係が認められた(vildagliptin群:2754例中14例 vs. 対照薬群1819例中1例、OR:9.29、95%CI:1.22-70.70)。一方、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を併用している患者においては、vildagliptin投与と血管浮腫の発生に有意な関係はなかった。

 

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