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N Engl J Med誌から
RA系抑制薬は1型糖尿病の腎症進展を防げず
ロサルタンとエナラプリルの効果をプラセボと比較、網膜症の進展は抑制

2009/07/15
小塩 尚代=メディカルライター

 腎症の臨床所見がない1型糖尿病患者に対するレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬の投与は、網膜症の進展を防ぐものの、腎症の進展抑制には効果がなかった。この結果はN Engl J Med誌7月2日号に掲載された。

 RA系の抑制が2型糖尿病患者の腎症進展を抑制することが報告されているが、1型糖尿病患者に対するRA系抑制のエビデンスは、腎症が進行した場合に限られている。また、尿中アルブミンと血圧が正常の1型糖尿病患者における網膜症発症・進展率が、糖尿病性網膜症のない患者ではアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)の投与によって低下するが、軽度から中等度の糖尿病性網膜症の患者では低下しないことが報告されている。

 そこで、米ミネソタ大学の研究者らは、1型糖尿病で腎症の臨床所見がない比較的早期の患者を対象に、ARB、ACE阻害薬、プラセボをそれぞれ投与したときの、腎および網膜の形態学的変化を比較する二重盲検ランダム化試験(Renin-Angiotensin System Study:RASS)を実施した。

 対象は1型糖尿病で、血圧、アルブミン排泄率(AER)、糸球体濾過速度(GFR)が正常な患者285例(このうち増殖性網膜症患者は網膜症の検討対象から除外)で、ロサルタン(100mg/日)群、エナラプリル(20mg/日)群、プラセボ群にランダムに割り付け、5年間追跡した。各薬剤の投与量は試験開始時には上記の半量だったが、その後のエビデンスに基づき途中から倍に増量した。増量後の平均投与期間は2.9±0.9年間だった。
 
 1次エンドポイントは、腎生検標本で糸球体中にメサンギウムが占める容積比率の変化とした。2次エンドポイントは生検評価によるその他の形態学的変化、AERおよびGFRの変化とした。網膜症に関するエンドポイントは、15段階の重症度尺度における2段階以上の進展とした。

 その結果、糸球体当たりのメサンギウム容積比率の5年間の変化の平均値に関して、ロサルタン群(+0.026 units、P=0.26)、エナラプリル群(+0.005 units、P=0.38)、プラセボ群(+0.016 units)の間に有意な差はなかった。腎の形態学的変化に関する2次エンドポイントにも有意な治療効果は認められなかった。

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