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Lancet誌から
心血管疾患の1次予防にアスピリンは本当に有用か?
性やベースラインのリスクにかかわらず、危険性を明らかに上回る利益見られず

2009/06/12
小塩 尚代=メディカルライター

 アスピリンは心血管疾患(CVD)1次予防において、危険性を十分に上回る利益を示さないことが、個々の被験者のデータを用いたメタ解析の結果から示唆された。この結果はLancet誌5月30日号に掲載された。

 USPSTFおよびAHAのCVD 1次予防のガイドラインでは、対象者のCVDリスクが上昇するに従い、アスピリンによるCVDイベント減少の利益が出血増加の危険性を上回るとして、CVDリスクが一定以上の対象者にアスピリンの服用を推奨している(関連記事)。

 しかし、過去のメタ解析は個々の被験者のデータに基づいたものではなかったため、アスピリンの利益と危険性を被験者のベースラインにおけるリスクに分けて比較することができなかった。そこで英国Antithrombotic Trialists' Collaborationの研究者らが、個々の被験者のデータを用いてメタ解析を実施した。

 解析対象とした試験は、CVDの既往がない被験者を対象にアスピリン服用と非服用とを比較しており、糖尿病ではない被験者を1000例以上組み入れている、予定投与期間2年以上のランダム化試験とした(全6試験、9万5000例)。予定投与期間中の初発イベントを、intention-to-treat解析で比較した。

 その結果、重篤な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)はアスピリン群で12%減少した(1年あたりアスピリン群0.51% vs 対照群0.57%、発生率比[RR]:0.88、95%信頼区間[95%CI]:0.82-0.94、P=0.0001)。この減少は、主に非致死的心筋梗塞の減少によるものであり、脳卒中と心血管死にはアスピリンの有意な効果は認められなかった。一方、頭蓋外大出血(消化管を含む)はアスピリン群で約50%増加した(1年あたり0.10% vs 0.07%、RR:1.54、95%CI:1.30-1.82、P<0.0001)。

 アスピリンによる重篤な心血管イベントの減少が、被験者のベースラインのリスクに左右されるかどうかを検討したところ、性別による差はなく(P=0.9)、冠動脈疾患リスクによる差もなく(予測5年リスクが2.5%未満、2.5~5%、5~10%、10%以上の間でP=0.3 for trend)、年齢(<65歳 vs ≧65歳)など他のサブグループにおいても差はなかった。

 著者らは、本メタ解析の1次予防試験は主に、スタチンを使用していなかった被験者における試験だったと述べている。そして、もしスタチンなどの使用によって服用者のCVDリスクが半減するのであれば、ガイドラインでアスピリンが推奨されているようなCVDリスクが一定以上の人でも、CVDリスク減少に対するアスピリンの寄与度は減弱する一方、出血の危険性は変わらないため、アスピリンによる利益と危険性がほぼ同等になってしまう可能性があると述べている。

 

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