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Circulation誌から
周術期、抗凝固薬から低分子ヘパリンへ安全に変更する方法
血栓塞栓症リスクによって層別化したプロトコールを提案

2009/06/10
西村 多寿子=東京大学

 抗凝固薬の長期投与を受けている患者が、手術や侵襲のある処置を受ける場合、抗凝固薬の休薬による血栓塞栓症のリスクや、投与継続による出血リスクが懸念される。このため周術期に低分子ヘパリン(LMWH)に変更することが推奨されているが、患者個々のリスクにあわせた標準的なレジメンは存在していない。

 イタリアのFCSA(Federation of Centers for the Diagnosis of Thrombosis and Management of Antithrombotic Therapies)が国内の血栓症センターに呼びかけて、抗凝固薬休薬に伴うLMWH投与についての前向きコホート研究を行った結果、血栓塞栓症リスクに合わせたプロトコールは、実現可能性、有効性、安全性に優れていることが明らかになった。この結果はCirculation誌オンライン版で5月26日、公開された(雑誌は6月9日号に掲載)。

 試験は、イタリア国内の22施設で2005年7月~2007年7月に実施された。データ収集は専門の調査員が行った。対象は、抗凝固薬の長期投与を受けている外来患者で、手術や侵襲のある処置を受ける予定があり、抗凝固薬の一時休薬を必要とする場合とした。ただし、登録時に18歳未満、体重40kg未満、腎障害(血清クレアチニン>2.0mg/dL)、LMWHの禁忌あるいはヘパリンによる血小板減少の既往、処置がスケジュールどおりに進んでいない場合は除外した。

 有効性の主要アウトカムは、抗凝固薬の休薬開始から処置終了後30日の間に発生した血栓塞栓イベントとし、安全性の主要アウトカムは、LMWHの投与中、または追跡期間内に発生した大出血イベントとした。

 周術期のプロトコールは以下の通り。
・手術5日前:経口抗凝固薬を中止、INRの検査。
・手術4~3日前:INRの結果が治療域以下ならばLMWHを開始。治療域より高ければビタミンKを投与して翌日再検査。
・手術前日:手術が始まる12時間以上前にLMWHの術前最終投与。
・当日:INRの検査、INR>1.5ならば手術延期を検討。
・術後1~2日:抗凝固薬の投与再開(術前の維持量+50%増量)、LMWHは術前と同量で再開(手術翌日)、止血状況を見ながら継続(術後2日)。
・術後3~5日:止血状況が良好ならば、術前の抗凝固薬の維持量を継続し、LMWHも継続。
・術後6日:INRの検査、INRが治療域ならばLMWHを中止して、抗凝固薬は術前の維持量を基本に適量を継続。

 患者は、血栓塞栓症リスクによって、高リスク、中~低リスクに分類され、ナドロパリン(Nadroparin)またはエノキサパリンの投与を受けた。高リスク患者は、人工僧帽弁、一葉式・二葉式機械弁の装着、心原性または原因不明の全身性塞栓の既往、過去3カ月に静脈血栓塞栓症の既往がある場合とし、LMWHの至適量より低用量(70 抗第Xa因子活性単位/kg)を1日2回皮下投与した(プロトコールA)。

 高リスクに該当しない場合を中~低リスク患者とし、整形外科手術における静脈血栓塞栓症予防の推奨投与量(57 抗第Xa因子活性単位/kg)を1日1回皮下投与した(プロトコールB)。

 安全性の評価では、実施した手術や処置の種類により、出血リスクを2群に分けた。出血の高リスクとは、手術予定時間が45分を超えるすべての手術および、整形外科、心胸部、血管、全身性、泌尿器系、神経系の手術とした。高リスクに該当しない場合を低リスクとした。

 

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