冠動脈ステントを1本留置した患者を対象に、薬剤溶出ステント(DES)を使用した群と従来のベアメタルステント(BMS)を使用した群の長期予後を比較したところ、死亡および心筋梗塞の発生は同等であり、再狭窄はDES群で有意に低いことが、スウェーデンで行われた大規模な観察研究で分かった。この結果は、N Engl J Med誌5月7日号に掲載された。
スウェーデン・ウプサラ大学の研究者らは、SCAAR(Swedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry)と呼ばれる、同国内でステント治療を受けた患者の登録システムを用い、DESの長期予後について研究を続けてきた。今回の報告は、2006年のステント留置例まで含めた最新の解析結果である。
03年から06年にSCAARに登録されたステント留置患者は4万7967人だった。本研究では、その中でステント1本のみを留置した2万8953人を対象として、DESを使用した群(1万294例)、BMSを使用した群(1万8659例)に分けて経過を追跡した。
1~5年(平均2.7年)のフォローアップ中、2380例の死亡、3198例の心筋梗塞が発生した。死亡と心筋梗塞の発生を合わせた複合エンドポイントでは、両群間に有意差は認められなかった(BMS群に対するDES群の相対リスク[RR]:0.96、95%信頼区間[95%CI]:0.89-1.03)。エンドポイントを死亡、心筋梗塞の発生に分けて解析しても、BMS群に対するDES群のRRは、それぞれ0.94(同:0.85-1.05)、0.97(同:0.88-1.06)と同等だった。
07年の報告では、DES群の6カ月以降の死亡および心筋梗塞の発生率が有意に高くなっており(RR:1.20、95%CI:1.05-1.37)、DESの長期予後に対する懸念が世界中に広がった。
循環器プレミアム:新着文献
N Engl J Med誌から
DESの長期予後はBMSと同等、スウェーデンSCAAR
2007年の報告ではDESの予後が有意に悪く、DESの安全性論争に火
2009/05/25
岸野 美奈子=滋賀県赤十字血液センター
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