日経メディカルのロゴ画像

JAMA誌から
慢性心不全の運動療法はイベントリスクやQOLを改善
そこそこの効果にとどまるが運動続ければ利益も持続、HF-ACTION試験

2009/05/01
小塩 尚代=メディカルライター

 慢性心不全運動プログラムを実行した患者では、死亡や入院が減少し、QOLを含む健康状態が改善することが、HF-ACTION(Heart Failure: A Controlled Trial Investigating Outcomes of Exercise Training)試験で示された。同試験では運動の安全性も示された。この結果はJAMA誌4月8日号に掲載された。

 北米や欧州の心不全ガイドラインは、収縮不全のある安定した心不全患者に運動を推奨している。しかしその根拠となった試験は、デザインが不適切といった理由から、運動の安全性と有効性には疑問が残されていた。そこで、十分な規模と期間を有する初めての試験として、HF-ACTION試験が企画された。

 この試験は米国、カナダ、フランスの82施設で実施された。対象は、臨床的に安定している慢性心不全の外来患者で、左室駆出率≦35%、NYHA II~IV度の2331例とした。

 ベースライン時の年齢中央値は59歳、28%が女性で、左室駆出率の中央値は25%、NYHA III~IV度が37%だった。不耐容や禁忌のない患者の95%がβ遮断薬かACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用しており、45%の患者が植込み型除細動器(ICD)または両室ペースメーカーを使用していた。追跡期間中央値は2.5年だった。

 これらの患者を通常治療群(1172例)と通常治療+運動群(以下運動群、1159例)にランダムに割り付けた。ランダム化は心不全の原因(虚血性・非虚血性)および施設で層別化した。通常治療群には疾病管理用の冊子を支給し、至適薬物療法を施行し定期的な身体活動を推奨した。

 運動群にはそれに加えて、まず指導下での運動(ウォーキング、トレッドミル、自転車エルゴメーター)を心拍数予備能の60~70%の強度で最長35分間、週3日、計36日実施させ、その後自宅で同じ強度の40分間の運動を週5日実施させた。運動群には自宅用に運動器具と心拍計を支給した。

 その結果、運動群では通常治療群に比べ、複合1次エンドポイント(総死亡+入院)および主要な2次エンドポイント(心血管系の原因による死亡/入院、心血管死+心不全による入院)のリスクが低下した。ハザード比[HR](95%信頼区間[95%CI])はそれぞれ0.93(0.84-1.02)、0.92(0.83-1.03)、0.87(0.75-1.00)だった。しかし、心不全の原因のみで補正を行ったこの解析では、いずれも有意な低下ではなかった。

 そこで1次エンドポイントの強力な予後因子を4つ選び(心肺運動負荷試験の持続時間、左室駆出率、Beckうつ病評価尺度IIのスコア、心房細動または粗動の既往)、これらの共変量でも補正を行ったところ、1次エンドポイント(HR:0.89、95%CI:0.81-0.99、P=0.03)および心血管死+心不全による入院のリスク(HR:0.85、95%CI:0.74-0.99、P=0.03)が、それぞれ有意に低下した。

 運動による1次エンドポイントのリスク低下は、さまざまなサブグループで一貫して認められた。著者らは、「本試験の対象患者が薬物やデバイスによる治療を十分に受けていたことを考えると、運動によって心血管死+心不全による入院のリスクがさらに低下したことは重要だ」と述べている。

 運動の安全性については、心血管系の有害イベント(心不全の悪化、心筋梗塞、不安定狭心症、重篤な不整脈、脳卒中、一過性脳虚血発作)、および一般的な有害イベント(大腿骨頸部または骨盤骨折による入院、骨折による外来受診、ICDの作動、運動中または運動後3時間以内のイベントによる入院または死亡)で検討したが、これらの発生率には両群で差がなく、運動の忍容性は高いと考えられた。

 

この記事を読んでいる人におすすめ