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Arch Neurol誌から
脳塞栓急性期の抗凝固療法、ヘパリンのブリッジングは不要
早期再発率が低いうえ重篤な出血リスクが再発予防効果を相殺

2009/01/07
山川 里香=医学記者

 心原性脳塞栓(CES)の急性期、ワルファリンが至適INRに達するまでのブリッジング目的で行うヘパリンエノキサパリン(低分子量ヘパリン)の投与は、重篤な出血リスクを高めることが明らかになった。米テキサス大の研究グループによるもので、Arch Neurol誌に掲載された。

 心原性脳塞栓は虚血性脳卒中の20%を占める。アテローム血栓性脳梗塞よりも梗塞巣が大きく、予後も悪い。発症後には再発予防のためワルファリンによる抗凝固療法を始めるが、至適INRに達するまで日数を要することから、ヘパリンやエノキサパリンを先行して投与し始めることが多い。しかしガイドラインでは、このような心原性脳卒中急性期の抗凝固療法を支持しておらず、コンセンサスも得られていないのが現状だ。

 解析対象になった症例は、2004年4月1日~2006年6月30日にテキサス大ヘルスサイエンスセンターに入院したCES患者中、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)治療を受けた者を除外した204例。後向き研究のデザインで企画され、治療内容により患者を以下の5群に分類した。各群の内訳は、無治療(NT)群:8例、アスピリン単独(ASA)群:88例、アスピリン投与後ワルファリン(WAR)群:35例、急性期へパリン静注(目標APTT:50~80秒)後ワルファリン群(へパリン・ブリッジング[HB]群):44例、エノキサパリン(1mg/kg、1日2回)とワルファリン併用群(エノキサパリン・ブリッジング[EB]群):29例だった。

 一次エンドポイントは、入院中の重篤な出血(グレード2の脳実質の血腫[parenchymal hematoma, grade 2;PH2]または全身性の出血)および脳卒中の再発、二次エンドポイントは退院時の転帰良好(modified Rankin Scale scoreで0~3)、脳卒中の進行、院内死とした。

 脳卒中の再発は、ASA群とWAR群で1例ずつ発生した。どちらも心房細動を有した患者だった。また脳卒中の進行は11例に見られたが、うち10例がASA群で、抗凝固療法を実施した群(WAR群+HB群+EB群)に比べ発生は12.5倍も高かった(p=0.003)。抗凝固療法の有用性が示唆される結果だが、本研究のASA群はベースライン時でより重症だったため、単に本来の病状を反映している可能性もあるという。

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