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心不全患者におけるカヘキシーの病態は「筋肉、脂肪、骨組織の減少」

2013/11/06

 2012.5.14の記事「心不全にみられるカヘキシーの新しい概念が提唱」で、心不全では低体重が予後不良であるとのデータが蓄積しており、カヘキシーの概念と簡単な診断法の提唱が海外で行われていることを述べました。今回はカヘキシーの病態です。

炎症性サイトカインの亢進


 心不全患者において血中の炎症性サイトカインは上昇しています。カヘキシーとの関連においては、TNF-αは蛋白異化にかかわっているとされますが、TNF-α、IL-6は肝臓におけるアルブミン合成を阻害し(J Clin Gastroenterol 2005;39:S143-6.)、TNF-α、IL-1は脳に直接作用して食欲を低下させることなどが報告されています(Neuropeptides 1999;33:415-24.)。

 炎症性サイトカインの由来について、心不全患者では血中エンドトキシン濃度が高いことが報告されており、腸管浮腫の存在により腸管の透過性が亢進し、腸管内のグラム陰性菌のエンドトキシンが血中に流出、エンドトキシンは細胞に働いて炎症性サイトカインを産生させるという説があります(Lancet 1999;353:1838-42. Lancet 2000;356:930-3.)。

 この説によると、コレステロールはエンドトキシンの活性を阻害する作用があるために、心不全患者では血中コレステロール値が高いほど予後良好であると推測されています。実際、心不全患者においてスタチン投与は、多施設研究であるCORONA、GISSH-HFの結果より心血管イベント抑制効果を認めず、ACCF/AHA心不全ガイドライン2013では心不全患者におけるスタチン投与は「no benefit, class III」と記載されました。

インスリン抵抗性


 インスリンは蛋白同化を促進しますが、インスリンが作用する骨格筋はグルコース利用の約70%を占め、骨格筋にインスリン感受性があることはインスリンが血糖降下作用を現わす上でも重要です。交感神経や炎症性サイトカインの活性は、インスリンの抵抗性に関与し高血糖状態を作ると考えられていますが、心不全患者ではインスリン抵抗性が認められ、予後不良因子であることが報告されています(J Am Coll Cardiol 2005;46:1019-26.)。

 さて、ひとくちに体重が減少するといってもその内訳は筋肉、脂肪、骨量の減少が推測されています。

筋肉における蛋白同化/異化のバランス異常


 蛋白異化と同化はそれぞれ異なった刺激を受けており、そのバランスは蛋白の合成と分解を決定します。健常人では1日250~350gの筋肉タンパクがアミノ酸に分解され、一部はタンパク合成に再利用され、一部のアミノ酸は血中にプールされます。その一部は肝臓で糖新生を受けグルコースとなり、エネルギーとして使用されます。コルチゾール、カテコラミン、炎症性サイトカインは蛋白異化を亢進し、インスリン、テストステロン、Insulin like Growth Factor (IGF)-αは同化を亢進します。

 心不全では、コルチゾール、カテコラミン、炎症性サイトカインの血中濃度は上昇し、インスリン抵抗性、テストステロン低下などが認められ、蛋白異化亢進バランスの異常が生じていると考えられています(図1。Am J Cardiol 2008;101:11E-15E.)。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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