日経メディカルのロゴ画像

ループ利尿薬は心不全において必要悪か?

2012/07/11

 利尿薬は心不全の治療において、歴史的に初期の薬に位置します。40年以上前、心不全患者の治療が安静と減塩が中心であった時代にフロセミドが登場し、たちまち患者の利尿がついて、うっ血状態が改善することから、心不全患者は利尿剤で治癒すると思われた時代もあったそうです。このためか、一部の循環器非専門医の間に「心不全の治療=利尿薬」という図式ができてしまいました。しかしその後、慢性心不全においてはACE阻害薬、ARB、β遮断薬が心不全患者の生命予後を改善するという前向き試験結果が多く得られ、利尿薬単独で心不全の治療を行うことはなくなりました。

 利尿薬は広く慢性心不全、急性心不全において、文字通り利尿を得てうっ血を改善するために使用されている薬剤であり、利尿薬を用いずに中等症以上の心不全患者を管理することは不可能です。特に急性心不全における臓器うっ血の症状を速やかに軽減させるため臨床の現場では頻用されており、その使用率は約90%と考えられています。プラセボ対象の前向き研究は行われていません。一方で、後ろ向きの解析ではありますが、利尿薬を多量に使用する患者の予後が悪いことが報告されています(図1)。このため、ループ利尿薬を使用するときは、低用量がよいのではないかという懸念がありました。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

この記事を読んでいる人におすすめ