日経メディカルのロゴ画像

癌と心不全のカヘキシーに対する、EPAの改善作用

2010/11/11

 前回の記事に対するコメントへの回答で、エイコサペンタエン酸EPA)にカヘキシー改善効果がある可能性を述べました。EPAの作用機序にはさまざまなものがありますが、カヘキシー改善作用というのは、私の知る限り整理されていないようです。

 カヘキシーは末期心不全でも生じますが、の末期でも生じます。その共通の機序として、炎症性サイトカインを介する機序が考えられています。今回は、癌と心不全のカヘキシーに対するEPAの効果をまとめてみました。

EPAの癌に対する進行抑制効果

 EPAが癌の進行抑制に有効かもしれないという論文は、1990年代より散見されます。まず、癌進行抑制の1つの機序として、EPAの癌細胞増殖抑制効果が考えられており、EPAが癌細胞の増殖を試験管内で抑制したという報告があります[1-2]。

 もう1つの機序として、抗炎症作用や、カヘキシー抑制効果が推測されています。実際のヒトでの検討としては、膵臓癌の患者にEPAを投与したところ、CRPが低下して体重減少が停止したという報告や[3]、EPA 2.2gを含んだ約600kcal(蛋白32g)の栄養補給を行ったところ、カヘキシーの進行が停止して、体重が増加に転じたという報告があります[4]。

EPAの心不全に対する効果

 では、EPAを心不全患者に投与した場合、どのような効果が期待できるでしょうか?

 心不全とEPAをキーワードとして文献検索すると、最も有名なものにGISSI-HF試験があります[5]。EPA投与により全死亡+入院が抑制されたことは、皆さんよくご存知のことと思います。

 ただ、その作用機序は解明されていません。考えやすい機序としては、不整脈の抑制を介したものがよく考察されるようです。ラットモデルにおいて、EPAが心筋リモデリングを抑制したという報告もあります[6]。
 

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

この記事を読んでいる人におすすめ