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心不全、どの段階までなら薬物療法が有効か

2010/05/28

 収縮能が低下した心不全患者の予後は、疫学的には時代とともに少しずつ改善してきています。しかし、収縮機能が保持された心不全患者の予後は、必ずしも改善していません1)

 収縮機能が保持されている心不全患者を対象とした代表的な前向き大規模試験として、ACE阻害薬であるペリンドプリルのPEP-CHF試験、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるカンデサルタンのCHARM-Preserved、同じくARBであるイルベサルタンのI-Preserved試験がありますが、予後改善は認められていません。せいぜい、心不全入院の回避が見られる程度です(下記参照)。

PEP-CHF試験10)
850例、プラセボvs.ペリンドプリル。1年後の時点で1次エンドポイント(総死亡+心不全入院)では、ペリンドプリル群で改善傾向(P=0.055)、心不全入院ではペリンドプリル群で改善(P=0.033)。しかし、全体の試験期間では、いずれのエンドポイントも改善は消失。

CHARM-Preserved試験11)
3023例、プラセボvs.カンデサルタン。1次エンドポイント(心血管死+心不全入院)で有意差なし(P=0.118)、心不全入院回避はカンデサルタン群で有意に改善(P=0.017)。

I-PRESERVE試験12)
4128例、プラセボvs.イルベサルタン。1次エンドポイント(総死亡+心血管入院)(P=0.35)、心血管入院(P=0.44)とも有意差なし。

 これらの事実を考え合わせると、もはや心不全を発症する段階では、薬剤介入は困難であることを示唆しているといえそうです。では、「高血圧から心不全」という過程での介入ではどうでしょうか?

 

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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