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日本に心不全遠隔モニタリングシステムは必要か

2010/04/22

 高齢化社会になるに従い、心不全患者の入退院は増加する一方です。再入院の原因は心不全自体の悪化によることもありますが、治療薬の内服中断や水分摂取過多、生活指導の不徹底などによることもあります。患者さんを長期にわたってサポートする人がいないこと自体が、再入院のリスクと考える研究もあります。そのため患者の遠隔モニタリングシステムは、患者指導により入院回避を目指す仕組みの1つと考えられます。

 原型として有名なものには、看護師が電話で食事、内服、症状、飲水、活動状況について把握し、利尿薬の調整や外来受診を促すという「DIAL試験」があります。試験の結果、心不全入院の回避が認められ、QOLが改善しました1)

 ほかにも様々な試験が実施されおり、指導内容は多岐にわたります。薬剤の副作用や、心不全症状の悪化時の対応が含まれていることもあります。近年では、単純に患者さんへ電話して指導するだけではなく、COMPASS-HF試験2)として報告されているように、植え込みデバイスによるモニタリングも試みられています。ただし、COMPASS-HF試験では心不全の入院回避は見られたものの、あらかじめ設定された1次エンドポイントに関して、デバイスの有効性は認められませんでした。

 最近のメタ解析では3)、遠隔モニタリングシステムの効果について、死亡、心不全入院といったエンドポイントを用いた検討があります。ランダム化試験で最も効果が認められたのは心不全入院の回避についてでしたが(通常治療群と比較したハザード比:0.71、P<0.0001)、「死亡」というエンドポイントも、有意に抑制(通常治療群と比較したハザード比:0.83, P=0.006)されました。コホート試験のメタ解析でも同様に、通常治療群と比較して、遠隔モニタリングシステムは死亡と入院を有意に抑制しました。

 

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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