心アミロイドーシスの生前診断は困難だとされています。教科書的に心アミロイドーシスを疑う根拠としては、心エコーのgranular sparklingや拘束性障害が有名ですが、エコー所見に習熟していないと判定できません。確定診断は心筋生検ですので、これも専門施設でないとできません。
このような理由により、循環器専門医でない限り心アミロイドーシスの早期診断は不可能というわけです。
しかし個人的には、いくつかの簡単な事項を組み合わせれば心アミロイドーシスを疑うことはできると考えています。それは、(1)フロセミド(商品名ラシックスなど)に抵抗性の浮腫、(2)非特異的ではあるが心電図異常、(3)脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心筋トロポニンなどのバイオマーカーの異常高値(単純な心不全では説明できないほどの高値)――の3つです。
まず、治療抵抗性の浮腫についてですが、心不全による普通の下肢浮腫であれば初期には比較的フロセミドによく反応します。しかし、アミロイドーシスであれば、浮腫が生じた時点で既に不可逆的な右室の拡張期圧の上昇があることが多く、治療抵抗性です。
次に心電図異常です。心電図は軽視されがちですが、特徴的所見ではないものの低電位、異常Q波を比較的高頻度に認めます1)。
さて、最近になって循環器領域ではBNP、心筋トロポニンなどのバイオマーカーの有用性が、特に心不全の診断、リスク評価において言われています。心アミロイドーシスについてはどうでしょうか。
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著者プロフィール
佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介
佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。
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