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Circulation 誌にONTARGET、TRANSCEND試験のサブ解析報告
ARBの心肥大抑制効果を心電図所見で確認

2009/10/20

 高血圧患者の治療効果の判定は、現在、末梢の収縮期血圧をモニターすることで行われています。確かに、収縮期血圧の高値から高血圧を疑うことができるわけですが、最近は「Beyond 血圧値」としての臓器障害が注目されるようになりました。

 高血圧症における臓器障害というと、やはり心、腎、脳などが標的臓器として頭に浮かびます。例えば腎臓では尿蛋白、アルブミンを測定します。この尿蛋白やアルブミンの値は、治療経過中に収縮期血圧とは独立して変動するので、腎機能の改善効果は収縮期血圧の改善効果とは別、すなわちbeyond blood pressure lowering effectと捉えられ、種々の薬剤間で「腎保護作用」の有無や大きさが比較検討されているわけです。

 一方、心臓についても、心血管イベントの抑制効果は降圧効果とは独立していることが、多くの薬剤間比較試験において確認されています。ただし腎臓での尿中アルブミンに相当するような、臓器障害の指標となるサロゲートマーカー(代理指標)は確立していません。

 心臓の臓器障害指標として、最も考えやすいのは心肥大です。高血圧から心不全に至る過程で、心肥大を介すると考えられているからです。しかし、尿アルブミンが採尿という簡単な方法で測定、検討できるのに対して、心肥大は心エコーやMRIなどの画像診断が必要とされてきました。

 確かに心エコーなどを使えば心肥大の評価は正確にできますが、評価者や施設間で条件に格差が大きく、技術、機器が必要なために試験を実施する際の被験者数が限られるという欠点があります。

 そこで、最近、心肥大の指標として心電図が再び注目を集めています。どこでも簡単に実施できる心電図検査ですが、その最新事情についてはほとんど知られていません。

 今回、ONTARGET試験、TRANSCEND試験の心電図サブ解析が報告されたので、ご紹介したいと思います1)。なお、過去に心肥大を伴う患者への、ロサルタンとアテノロールの比較試験であるLIFE試験の心電図サブ解析については、今年4月に既にご紹介していますのでぜひご参照ください(「降圧が得られても心血管イベントを発症する患者」 )。

テルミサルタン群の心肥大が有意に減少

 ONTARGET試験の対象は、ACE阻害薬に認容性のある心血管病変ハイリスク患者でした。3群に分けて、それぞれアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のテルミサルタン、ACE阻害薬ラミプリル、テルミサルタン+ラミプリルに割り付けたところ、テルミサルタン群にラミプリル群と同等の心血管イベント抑制効果が認められた――という試験です。TRANSCEND試験はACE阻害薬に認容性のない患者を対象に(ONTARGET試験に組み入れずに)、テルミサルタン群とプラセボ群に割り付けて比較したものです。

 心電図の評価は、ランダム時、2年後、5年後に行い、心肥大所見である(1)R wave in aVL+S wave in V3が女性なら2.0mVより大きい、男性なら2.4 mVより大きい、(2)strain patternが認められる――の2項目で、いずれかが認められる場合にイエス、いずれも認められない場合にノーとして検討されました。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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