高血圧、脂質異常症はそれぞれ心血管イベントの強力な危険因子であり、コントロールの重要性が多方面で述べられています。ガイドラインではそれぞれの目標値が設定されていいます。ただ、目標達成のために処方薬剤数がどんどん増え、医療費が高額になる一因になっているという側面もあります。また、薬剤数の増加は服薬コンプライアンスの悪化の原因にもなります。
この問題の解決策の1つとして、合剤を処方するという方法があるわけです。
最近発売された、あるいは現在開発中の合剤には「アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)+降圧利尿薬」「Ca拮抗薬+ARB」、「スタチン+フィブラート」などがあり、これらを処方することで内服状況がよくなり、薬剤費も抑制できる可能性があるわけです。今回は、日本で初めて承認された降圧薬+脂質異常症治療薬の合剤「アムロジピン+アトルバスタチン」について、その根拠となった論文のお話をしましょう。
Ca拮抗薬アムロジピンはALLHAT試験で、ACE阻害薬リシノプリルと同等の心血管イベント抑制効果を示し1)、VALUE試験ではバルサルタンと同等の心血管イベント抑制効果を示し2)、Ca拮抗薬の中では最も心血管イベント抑制効果のエビデンスが確立している薬剤だといえます。
一方のアトルバスタチンは、TNT試験では心血管イベントの2次予防には、コレステロール値は「The lower, the better」という概念を提唱し3)、ESTABLISH試験では急性冠症候群患者の冠動脈のプラーク退縮を初めて確認したストロングスタチンです4)。ではこの2剤を同時に投与した場合、その効果は単純に2剤を足した効果なのでしょうか?それとも相乗効果があるのでしょうか?それを確認したのがASCOT試験です。
ASCOT試験では、まず高血圧患者約2万例を、「β遮断薬アテノロール+降圧利尿薬」をベースにした群と、「Ca拮抗薬アムロジピン+ACE阻害薬」をベースにした群に割り付けました。これがASCOT-BPLA試験です。5)
そしてさらに、ASCOT-BPLA試験の被験者のうち総コレステロール値が250mg/dL以下の患者1万例は、プラセボ群とアトルバスタチン10mg/日投与群に割り付けられました。これがASCOT-LLA試験6)です。
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著者プロフィール
佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介
佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。
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