日経メディカルのロゴ画像

重症の大動脈弁閉鎖不全にβ遮断薬は有効か?

2009/08/07

 4月のブログ「慢性心不全の急性増悪で入院―。β遮断薬は中止すべきか?」「末期心不全で血圧が低下―。β遮断薬は使用すべきか?」で、急性心不全の悪化時、慢性心不全の低血圧時でもβ遮断薬は投与した方がよいことを述べました。β遮断薬の投与について日常臨床で悩む点は、ほかにも数々あります。今回は、重症の大動脈弁閉鎖不全(AR)へのβ遮断薬投与についての報告を紹介しましょう。

 数多くの多施設研究の結果から、左室収縮能が低下した慢性心不全症例にβ遮断薬を投与した場合に、左室に「逆リモデリング」が生じて、収縮能の改善とともに左室径の縮小、機能的僧房弁逆流の改善が見られることが分かってきました。ただし、対象のほとんどの症例は高血圧性、虚血性(心筋梗塞後)、または心筋症の症例でした。

 重症心不全を対象としたカルベジロールの大規模試験COPERNICUS試験1)やカルベジロールとメトプロロールの比較試験COMET試験2)でも、重症の、弁疾患が原因である心不全患者は除外されています。弁疾患は本来、外科手術の適応だからです。

 重症ARへのβ遮断薬の効果はどうなのか――。この疑問に答えたのが、Sampatらの報告です3)。心エコーで重症ARと診断された756例を対象に、後ろ向きの解析が行われました。被験者の平均年齢は61歳、59%が男性、平均左心駆出率(EF)が 54%で、糖尿合併は14%、高血圧合併が65%、冠動脈疾患合併は33%でした。47%にβ遮断薬が投与されており、38%は観察期間中に大動脈弁置換術を受けました。ARの原因は二尖弁10%、大動脈基部の拡大10%、大動脈弁石灰化30%、感染性心内膜炎の既往が10%でした。

 β遮断薬が処方されていた患者355例と、されていなかった患者401例を比較したところ、処方されていた患者では年齢が若く、冠動脈疾患の合併、高血圧の合併が多く、弁置換術も多く行われており、ACE阻害薬の投与も多いという背景差がありました。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

この記事を読んでいる人におすすめ