日経メディカルのロゴ画像

急性心不全の短期指標は必ずしも長期予後と相関しません

2009/07/02

 慢性心不全、高血圧、脂質異常症の領域で薬剤の効果判定を行うときは、それぞれ収縮能の改善、降圧効果、脂質値の改善だけでなく、長期の心血管イベントの抑制を証明することが必須条件となっています。

 では、急性心不全ではどうでしょうか?急性心不全は呼吸困難を生じる救急疾患です。ですから症状の改善という短期指標が必ず必要になりますが、短期効果と長期予後が必ずしも相関しない指標が多く認められ、このことが臨床試験の解釈を複雑にしています。実際、急性心不全で使用される点滴薬剤には、長期に心血管イベントを抑制する効果が多施設の大規模臨床試験で証明されているものはありません。今回は、その短期指標について考えてみたいと思います。

 まず、自覚症状の改善の1つである「呼吸困難感の改善」です。これはLikertスケールで数値化され、硝酸薬とネシリチドを比較したVMAC試験1)などでも使用されています。しかし、「呼吸困難の改善」は客観性、再現性を持たせようとすると煩雑になり、臨床的には使いにくい可能性があります2)

 次に、右心カテーテルにより得られる古典的血行動態指標の1つである「肺動脈楔入圧(Pcwp)」です。ESCAPE試験では右心カテーテルによる血行動態指標をガイドにして治療した群と、右心カテーテル非使用群が比較され、長期予後には両群間に差が無いことが示されました3)

 先に紹介したVMAC試験でも、硝酸薬と比較して、ネシリチドはPcwpを低下させましたが、長期予後では両薬剤は同等でした。従って、Pcwpの急性期治療における変化は、短期的には臨床的な改善を示しても、長期予後とは必ずしも相関しないということが分かったわけです。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

この記事を読んでいる人におすすめ