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末期心不全の低栄養状態、重要なのは食事だが…

2009/06/12

 肥満は、心不全を含む心血管イベントの危険因子です1)。しかし末期心不全患者は、むしろ低体重、低栄養状態となり、癌患者のようにカヘキシー(悪液質)になることが知られています。

 AnkerらのグループとFonarowらのグループはそれぞれ、10年前からこの現象に注目しており、心不全患者において観察される体重減少が、予後悪化と関連することを報告しています2-3)

 原因としては、腸管浮腫からの微量のエンドトキシン吸収や4)、炎症性サイトカインの活性化などが考えられています。ではこの低栄養状態に対して、どのように介入すべきでしょうか? 残念ながら日本では、学会でもあまり話題に上らないテーマです。しかし海外では、急性心不全、慢性心不全の著名な教授陣が中心になって、末期心不全患者への栄養介入の可能性を模索しています5)

 問題を考える上での第一の課題は、末期心不全患者は食欲が低下していることが多いということです。従って看護の問題から入らなければなりません。慢性心不全患者が食事を残し始めたら何らかの対策を講じる必要があるわけですが、その際、病院栄養士、医師、看護師が協力して、栄養サポートチーム(Nutrition Support Team; NST)を組織するという選択肢も考慮すべきだと思います。

 介入点としては、以下のような事項が挙げられます。ただし現在の実臨床では、すぐに実施するのは困難なものもあります。今後の課題として考えるべきでしょう6)

(1)内服薬の副作用、味覚の変調によって食欲低下を来している場合には、一度投薬内容を再検討してみる。口腔内のケア行い、清潔に保つ。

(2)水分制限、利尿薬内服で口腔内が乾燥している場合には、通過性のよい食物を選択する。例えば、高カロリードリンクを用いるといった対応を取る。ただし消化管浮腫により、嘔吐、下痢を生じやすいので注意が必要である。

(3)塩分制限について、欧米では4g/日以下の減塩食が推奨されているが、日本人の場合、厳しい減塩は食欲を著しく低下させるので、かえって低栄養を助長する恐れがある。従ってQOLも考慮に入れ、塩分を7g/日程度までは許容する。塩分の代わりに香辛料、ハーブなどをうまく利用する。日本人になじみのあるハーブはシソである。

(4)慢性心不全の末期になればなるほど食欲は低下する。食事が義務のようになり、楽しめなくなる傾向がある。理想的には、食事の雰囲気、見た目の工夫、好みの食事メニューへの変更ができるとよい。また、一度に全部を食べられない場合は、少量を頻回に摂取できるようにするとよい。大人数の食事を一斉に提供している病院では困難の場合も多いだろうが、食事の温度も重要である。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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