New England Journal of Medicineにドロネダロンの記事が掲載され、FDAの認可待ちの状況であることが述べられています1)。今回はアミオダロンとドロネダロンについてまとめてみます。
塩酸ドロネダロンは、抗不整脈薬である塩酸アミオダロンの改良タイプとして位置づけられています。アミオダロンは有用性の高い薬剤ですが、多種多様な副作用が問題となっています。
一方、ドロネダロンはアミオダロンとは異なり薬剤の分子にヨウ素を含まず、また水溶性であるためにヨウ素に関連した甲状腺の障害、肺線維症などの副作用は示さないといわれています。
まず、おさらいとしてアミオダロンの大規模試験について先にまとめておきましょう。アミオダロンの効果は、(1)心不全患者における突然死予防、(2)心房細動患者における洞調律維持――の2つにわけられます。
歴史的にはGESICA試験で、心拍数の多いうっ血性心不患者においてアミオダロンは生存率を改善し2)、CHF-STAT試験では、うっ血性心不全患者で心房細動を有する患者においてアミオダロンにより洞調律に回復した患者では死亡率が有意に低下したことが報告されました3)。
一方、侵襲的手技による突然死予防のデバイスの1つとして、植込み型除細動器(ICD)が普及しつつあります。致死的不整脈を有する患者におけるICDとアミオダロンの比較では、MADIT-II4)、SCD-HeFT5)などの試験により、心不全患者においてはICDの方がアミオダロンよりも突然死予防効果が大きいことが報告されています。
このため、致死性不整脈を伴った心不全患者の突然死予防目的においては、ICDを第1選択とし、アミオダロンはICD頻回作動患者のQOL改善目的など、補助的に使用されることが多くなってきています6)。
上室性頻脈性不整脈に対する検討では、CTAF試験ではアミオダロンがプロパフェノンやソタロールより強力な心房細動抑制効果があることが示されました7)。その一方でAFFIRM試験8)などより、心房細動の管理においてレートコントロールとリズムコントロールでは予後に差を認めないとの報告もあり、副作用の可能性が高い高用量のアミオダロンを投与してまで洞調律に固執する必要はないと考えられています。
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。
著者プロフィール
佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介
佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。
この連載のバックナンバー
-
2016/04/26
-
2016/02/05
-
2016/01/12
-
2015/10/05
-
2015/02/05