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心不全治療:投薬で迷うケース その1
慢性心不全の急性増悪で入院―。β遮断薬は中止すべきか?

2009/04/15

[4/15訂正:図1、図2の出典を訂正しました]

 心不全治療において、β遮断薬の投与で予後が改善することは、多くの大規模試験により証明されています。代表的な試験としては、カルベジロールについてのCOPERNICUS試験1)、ビソプロロールについてのCIBIS II試験2)、コハク酸メトプロロールについてのMERIT-HF試験3)などが挙げられ、いずれにおいてもプラセボとの比較で、生存率の改善が認められています。エビデンスレベルも高く、心不全患者へのβ遮断薬の投与は既にルーチンになってきました。

 試験の結果は、ガイドラインにも記載されてきています。当初は心不全患者へのβ遮断薬の投与は禁忌とされていました。しかし大規模試験の結果に基づいて一般的の診療現場でも実施されるようになってから、既に10年の年月が過ぎています。

 最新の欧州心臓学会(ESC)「急性、慢性心不全の診断と治療ガイドライン」では、左室収縮能が低下した慢性心不全の治療薬としてACE阻害薬、β遮断薬は禁忌でない限り全例に投与し、入院患者の場合は入院中から開始すべきである(classI、エビデンスレベルA)4)と記載され、「ACC/AHA心不全の診断と治療ガイドライン2009 update」でもclassI、エビデンスレベルAの記載とされています(参照)。

 ちなみに「入院中から開始」という点は重要です。β遮断薬を外来で開始するのは困難です。心不全悪化の副作用の可能性もあるので、心不全患者が入院してきたら、必ず、退院前にβ遮断薬の処方を開始して患者教育を行っておく必要があります。そうすれば安全に、80~90%の心不全患者にβ遮断薬が導入可能だと考えられます。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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