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古くて新しい話題「心肥大」
降圧が得られても心血管イベントを発症する患者

2009/04/01

 「高血圧治療ガイドライン2009」(日本高血圧学会)が2009年1月に発表されました。改定は5年ぶり3度目です。治療ガイドラインが普及したことに加えて、各地で心血管イベント予防の啓発活動も随分と行われています。

 それらの効果で、高血圧患者の血圧値は10年前、20年前と比較すると大きく改善しました。しかし最近になって気付くのは、降圧が十分に得られているのにイベントを発症する患者がいることです。高血圧患者がどのように臓器障害を合併していき、心血管イベントへと悪化するのかを十分に解明する必要があるわけです。そこで今回は心肥大に注目してみましょう。

血圧値は高血圧の完璧な代理指標ではない

 まず、血圧値は、高血圧という疾患の完璧な代理指標(surrogate marker)ではないことに触れておきます。

 年齢とともに高くなる血圧値は、心血管イベントの予測因子であることが知られています。血圧値の測定は簡単で、降圧薬の効果が簡単に分かります。降圧により心血管イベントの抑制効果が得られることは、過去に多く行われてきた高血圧症例での大規模試験の結果から明らかです。このような背景から、「血圧値は高血圧という疾患の代理指標」になるとの期待があるわけです。

 しかし血圧値が下がったにもかかわらず心血管イベントを生じる患者が一定数存在することも確かです。そこで血圧値とは独立した予後規定因子として、臓器障害という概念を考える必要が出てきます。血圧値が下がったのに心血管イベントを生じる原因は「臓器障害の存在」だと仮定すると、理論的に説明できるからです。

高血圧症における心肥大

 血圧値と独立した臓器障害にはどのようなものがあるのでしょうか?もちろん、血圧値の上昇と臓器障害という2つの現象は同時進行するわけですから、ある程度は相関し、同時に独立した現象でもあるためある程度は相関しないという結果が予想されます。

 高血圧患者における臓器障害の検出法として、頸動脈肥厚、心肥大、脈波伝播速度、尿中微量アルブミンなどの測定があります。今回取り上げる心肥大は古くから心不全を含めた心血管イベントの危険因子として知られています。逆に、心肥大の原因として最も頻度が高いのが高血圧であることも分かっています。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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