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CKD患者に対する投与試験で、有効、無効の試験結果が混在
ある?ない?スタチンの腎保護効果―。私の回答はこうです。

2009/03/02
小田修司

 心疾患と腎疾患には密接な連関があります。高血圧や慢性心不全患者において腎機能の悪化は心臓の病態とは独立した予後規定因子であることから、心腎連関がトピックスとして取り上げられています。高血圧、心不全の領域では、ともに早期から腎保護効果を期待してACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)を使用しようという動きになっていて、既に日本腎臓学会、日本高血圧学会の「CKD(慢性腎臓病)診療ガイド」や日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2009」にも記載されています。

 一方、高血圧と同様の動脈硬化の促進因子としては脂質異常症もあるのですが、脂質異常症の治療薬の腎保護作用については、国内外を見渡してもまとまった総論が少ない現状です。今回は、スタチンが持つ腎保護作用についてまとめてみましょう。なお、スタチンの腎以外への多面的効果や心腎連関そのものについては今回触れませんので、成書をお読みください。

 さて、スタチンの腎保護作用についてCKD診療ガイド2007には、「スタチンによる治療が蛋白尿や微量アルブミン尿を軽減する効果があることが示されており、蛋白尿を有するCKDでは積極的にスタチンを使用することがすすめられる」と記載されています。

 実際に論文を見てみましょう。CKD患者に対するスタチンの腎保護作用の効果判定には、(1)微量アルブミン尿、蛋白尿の減少、(2)eGFRの改善または自然低下の減速、(3)CKD患者の心血管イベントの抑制――を見るのがよいと思われます。これらの指標はいずれも、ACE阻害薬、ARBの腎保護効果を検討するときに用いられた指標です。またCKD患者にスタチンを投与した場合の副作用の頻度も検討する必要があります。ただし実情は、小規模試験による検討がほとんどで、薬剤ごとのエビデンスがそろっているわけではありません。

 「スタチンに腎保護作用あり」の結果が出た報告で、症例数が多いものとしては、TNT(Treating to New Target)試験1)のサブ解析が挙げられます。これは安定狭心症患者に対してアトルバスタチン10mg投与と、より高用量の80mg投与を比較検討した試験です。CKD患者において、アトルバスタチン投与がeGFRを改善し(図1) 2)、心血管イベントを抑制する(図2) 3)ことが報告されました。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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