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国際標準化と高感度測定系の実用化進む
心不全における生化学指標の最新事情

2009/01/09

 生化学指標を使えば、血液検査を行うだけで簡便に結果判定が可能です。肝疾患についてはトランスアミナーゼ、腎疾患ではBUN、クレアチニンなどが測定されています。循環器領域での生化学指標の利用は、ほかの疾患領域と比べるとずいぶん遅れていましたが、最近は心不全領域でのナトリウム利尿ペプチド検査、急性心筋梗塞での血中心筋トロポニン検査などが定着してきた感があります。私の専門はこれらの生化学指標の測定です。今回は最新の情報と今後の展望についてご紹介したいと思います。

 ある生化学指標が臨床的に定着するためには、その指標が(1)早期診断、(2)リスク評価に有用であることは絶対条件ですが、(3)臓器疾患特異的であり、(4)治療経過と連動することも必要です。

 心不全の生化学指標として、研究的には100種類前後が予後予測因子になると報告されています。しかし上記の(1)~(4)の条件を満たす生化学指標は非常に少なく、2007年のCirculation誌に掲載された「心不全の生化学指標測定ガイドライン」では、BNP、NT-proBNP、心筋トロポニンのみに焦点が当てられていました1)。なおBNPはわが国では塩野義製薬の測定系が一般的ですが、海外では複数の測定系があり、国際的な絶対値の統一は取れていません。

 一方、わが国で2007年から測定可能になったNT-proBNPは、世界的に見ると絶対値の解釈についてコンセンサス・パネルでの統一見解が得られています2)。 急性心不全患者についてのカットオフ値として、除外は300pg/mL以下、確定は年齢別に450pg/mL(50歳以下)、900pg/mL(50~75歳)、1800 pg/mL(75歳以上)と提唱されています。

 また慢性心不全患者については、除外カットオフ値として125pg/mL以下が提唱されています。心不全の生化学指標測定ガイドラインでは表1のように、BNP、NT-proBNP測定を心不全の診断、リスク評価に用いることがclass I、IIaとされています。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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